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2013年7月31日 (水)

小さな旅

雨上がりの緑の風に田んぼの稲がさざ波立って、まるで見えない猫バスが通り過ぎているようだ。
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こちらの中国地方に降り続いた豪雨を全国の友達が案じて下さった。鳥取は被害もなく、警戒したわりにはなんとか無事だった。

 

時間を見つけて東北震災支援の本部に集めた衣類やらお菓子やらの荷物を届け、福島の子ども達をお迎えする直前の皆さんにエール。震災支援の本部で働く方達自身も東北から自主避難の皆さんだ。やって来た子ども達は砂丘に行ったり、因幡の歴史ある神社に行ったり、みんな元気にこちらの空気を満喫してくれているようだ。
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(最後にお届けしたおせんべいは、アトリエトトロデザインプロデュースの「夢のかけら」鳥取城北 たまだ屋さん製造//。右は福島ご出身の佐藤さん.左は岩手ご出身の勝又さん.真ん中はトトロです)      

アトリエでは、月曜クラスも水曜クラスも夏休みのあれこれを話題にしながらワイワイと元気だ。とりわけ一年生達の成長はめざましく、みんなで知恵を出し合って工作している姿は とてもいい。お互いに考え合うと知恵が出るし、自慢もしたい。完成したときには「やったぁ!!」の声が集まってうれしさも倍増だ。小さくても男の子は女の子に「すごい」といわれるのが好きみたい。というわけで、私はそれを見ているのがとても好きだ。

1307318(紙粘土で動物たちのレストランをつくっているところ)

 
1307319(箱でビー玉のコロコロ迷路を創作中の二人組)

土曜日、いよいよあの「そら君」が(ひとりでやらなくちゃ・・)という決意の顔でやって来ると、なんと陸君がニコニコと来てくれたではないか。「よかったね。そら君。」と声をかけると「べつにぃ。」と憎たらしい返事。目はしっかりうれしくてたまらないふうに笑っていた。

「どれ、描いて見せてよ。」と言って陸君はさりげなく座っている。結果はこれ。大空に勇気をふりしぼって飛んでいくバッタの絵本「とべ バッタ」を見て描いた。誰からともなく「いい絵だね。」と言う声が上がった。「そんなときには拍手よ!!」パチパチパチ。なんだかすごい。子ども達の可能性には際限がない。
1307313(照れて緊張しているそら君)

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折しもその日は夜に駅前の新しく出来た大屋根(バード・ハット)の下で 「青い鳥コンサート」の初日だった。もう20年以上も続いている土曜夜市という夏の風物誌の中で、アマもプロも出演して毎週ジャンルごとのサウンドを演奏して、市民のお楽しみのコンサートだったのだが、今年はいろいろな理由で打ち切られそうになってしまい、若者達の発表の場が消えそうなとき実行委員長が相談に来たのがうちのボスだった。ボスは第一回を立ち上げた本人で、じれったいことにあらゆることを「自分がやった。」と言わないことをステイタスにしている人なのだが、探して相談されたのははじめてのことで、「よしっ。」と腰を上げアドバイザーになった。若者達の本気な眼差しに弱いのだ。

かくてあちこちにかけ合い実現のはこびとなり、たくさんのスタッフと早朝から準備し、土曜の夜を迎えたというわけだ。私はアトリエ教室を夜までやり終え、タクシーを呼んで手伝った陸君ときょうかちゃんをのせて駆けつけた。アトリエで絵ばかり描いていても得られない感動をたまに体感してほしいと思って、時々こうして片道20分くらいの小さな旅をしてしまう。

そこで私達が見たものはやっぱり大きなものだった。裏方統括で音響やら会場やらタイムキープの指図をするボスとそれについてくる若者達。うちの事務所は9月にまた大きなコンサートを企画しているので、ボスのバンドメンバーから抜粋した小編成での見事なフュージョン曲もあった。ソロサックスでセンターを務めたさとし君はアトリエ一期生。東京から戻ってきての出演だ。出番前に陸君ときょうかちゃんに先輩らしい挨拶をしてステージへ。裏方の手伝い経験のある陸君にはまたいい刺激になったそうだ。
1307314(出来たばかりの大屋根に光が入り都会のようだ)

1307316(沿道には黒山の人だかり。夏の夜に屋台のたこ焼き、氷、そして浴衣のご家族連れ)


帰路は仕事帰りのきょうかちゃんのお母さんとオシャレなレトロの店で夕食を摂りつつ、私達がどうしてこの職業を続けることができるのかを話した。収入はとても少ないのにだ。「たくさんの人が感動してくださるからよ。」答えはそれだけだ。そしてそれを至福に思う自分たちもいる。ボスとは学生時代からの長い付き合いだけど、いつも目標はそれしかなかった。心を砕いて準備し、作品を磨いておとどけするのはどの仕事も同じだ。そして私は絵しか出来ないからその道を行く。人生は一度しかないのだから。私には元気と明るさをお届けしていく道しかないのだ。

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(鳥取市瓦町の小さくてレトロ風な レストランnee)

とてもたのしい夜だった。いつものところからちょっとだけ移動して感動すると溜まった疲れも吹き飛んでしまうから、アトリエの大きな子ども達を道連れにする小さな旅もたまにはいいものだ。

 

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コメント

猫バスの風がこちらにも届きました
幸福力たっぷりの『夢のかけら』で元気モリモリでますね♪
粘土のレストランにビー玉ころころ♪
楽しそうなアトリエの子供たちの声が聞こえてきます。
そら君の‘とべ バッタ’の絵もとても素敵です。
実行委員長のボスさんも素敵な方ですね
絵ばかり描いていても得られない…
心を砕いて作品をお届けする…
先生の素晴らしい考え方に、いつも感動します。
私も先生のように元気と明るさを届けられるように、
少しでも近づけるように、
一生懸命、一度きりの人生を生きたいと思います(*゚ー゚*)
みなさまと元気いっぱいワッハッハーな夏をお過ごしください

たんぼの緑がとても綺麗ですね。
今日も素敵なお話をいただきました。
ありがとうございます。

先日教えていただいた「あめのひ」やっと
手にとることができました。
なんて目に心にやさしい色なんだろうと
思いました。短い言葉のひとつひとつを
かみしめています。
ありがとうございます。

ずっか 様
ありがとうございます。
この田んぼはうちの田んぼなんですよ。
ボスの家は農家で、トトロはそこに長い間ごやっかいになっているというわけです。はははヽ(´▽`)/
アトリエには毎日通いです。だから出勤のときは 田んぼのさざ波に乗っかっています。
人には何か一つできることがあるはずだから、それを磨いてお届けしようと、アトリエで話しています。
ずっかちゃんのお菓子創りのようにね

くまきろり さま 
ありがとうございます。
風景がやさしい目薬のような季節です。
目一杯のエネルギーを出し切る子ども達といると、自分も跡形もなく一回ずつ燃え尽きます。

同じ系統で、やはり福音館の「よあけ」という絵本はさらに響くと思います。いそいでオススメです。何十回よんでも私は飽きませんから。トトロからの夏のオススメの贈り物にします。

トトロさん、実は「よあけ」も一緒に入手しました。
すごい以心伝心で、びっくりしています。
さっき読んだところです。仰るとおりさらに響いて、
ちょっとうるうるしていましました。
素敵な夏の贈り物、ありがとうございます

くまきろり さま
じぇじぇじぇーーーーーっ!
それは すばらしい。よかったよかった。
暗闇のページにおじいさんを発見しましたか?

おじいさん発見!

トトロさんのところには、いつも賑やかで楽しくて心がキュンとくるエピソードがいっぱい詰まっていますね。
その裏にはやはり色々なご苦労もあると思うのですが、そんなことはみんな猫バスがどっかに持っていってくれるのでしょうか。
そして代わりに運んでくるのは、沢山の人の感動。
拍手よ、パチパチパチ・・・・声と手を叩く音が聞こえてきそうです。

りんふう 様
また大きな雨が通り過ぎて、今回は被害も出たらしく、一夜明けてのジリジリ猛暑です。そちらはいかがですか?
こんな厳しい自然の中で人工的なテストや勉強ばかりしていてはもったいないから、人のことをすごいと尊敬したり、ステキと感動したりして拍手の出来る人が一番すごくてステキなんだよ・・。と トトロ流の気持ちを伝えています。小さい手でパチパチと拍手する音ってトタン屋根の小雨のように気持ちのいい音なんです。いろいろな屈託も吹き飛びます。
 いつも お読み下さってありがとうございます。お元気で。
(=゚ω゚)ノ o(_ _)oペコッ

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