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2013年6月20日 (木)

大空と陸と碧い海

雨が降っている。

ようやく梅雨らしい雨で息を吹き返したのは緑の植物だけじゃなくて生き物たちみんなが生き返った。やっとのことで猛暑をすごした不自然な毎日は本当にしんどくてまだ6月なんて思えないほどだった。地球の自然は厳しいものだ。

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そんな中でアトリエの中ではいろいろなことがあったけれど、とてもすばらしい出来事を書こう。

大空と書いて「そら」君と読む小2の男の子がアトリエにやって来てから1年と2ヶ月。殆ど一度もワハハと笑顔になったのをみたことがなかった。何かしらの発達障害を抱えていて、歳の離れたお姉ちゃんは大学生だし,お父さんは単身赴任中だからお母さんと彼は二人三脚のように寄り添って暮らして、時折いろいろな症状を見せる度に美人のお母さんの顔が曇った。一年生になったときアトリエ入りした。知的だけれど、空気をまったく読まず、いつも緊張しているようだった。
私は高校生の陸君に事情を話し彼の側に居てもらうようにした。土曜4時半からの彼のクラスには、県外や遠方から列車で来る子や高校生、中学生などが入り混じり、みんな長くアトリエに来ている子ばかりだったので、絵を描かずにけん玉に熱中したりするソラ君のことをさして気にせぬふりをして、それぞれのアトリエタイムを楽しんでいた。

二週間前に、このクラスに長く来ていた兄妹が遠方ということもあり、いろいろな事情が絡まって、いきなりご両親とやって来てアトリエを卒業した。その日レギュラー陣は殆ど部活やイベントで休んでいて兄妹と別れが出来たのは古い仲間ではソラ君だけだった。キョトンとしている彼を陸君が連れ出して、握手をさせたり手を振らせたりして兄妹を見送ったのだ。兄妹はいつもソラ君を気にかけてさりげなくおやつの皿を下げてあげたり、「絵を描こうか?」と言ってくれていた。
それから二週間してこの前の土曜は高三模試の為、陸君がいなかった。陸君からの伝言は、「またこんどな。」だった。私はその通りに伝え、「今日はひとりで絵を描くんだよ。」と言った。「陸君にみせなくちゃね。」と画用紙を渡した。

久しぶりにいつものメンバーの顔も揃い、居なくなった兄妹のことをみんなに報告して、陸君のかわりに時間をずらして中学生のきょうかちゃんを呼んであった。「ソラ君のとなりに座って何かしといてくれる?」と。先日手伝いに来たとき陸君から、「おれが卒業したらあの子どうなるかな?」という心配を聞いていた彼女は鉛筆を削ったり、となりでイラストを描きながら彼を見ていた。「陸君はテストで来れないけど、このお姉ちゃんが来てくれたから。」と説明し、みんなもいつもより彼を気にかけながら過ごしていた。

そのときだった。「絵を描くよ。」

そう言って近くで見事な帆船を描いていたアオイ君のところから小さい船を「かして」と持って行き、画用紙に向かった。消しゴムで消し消し、集中して船を描いて、続け様にトランペットのモデルを置いてトランペットを描いた。さらに難しい部分を「せんせいおしえて。」と言って私が描くとおりに描いている。一瞬アトリエはシーンとなった。自分から描いたのははじめてのことだったから。アオイ君が「おやつは?」と聞くまで時間が過ぎたのに誰も気づかなかった。いろいろな思いを込めて乾杯をして、あの兄妹のことに話題が進んだとき、
「高校に入ったらもどってくるんでしょ?」
ソラくんが言った。またみんながざわめいた。彼が自分以外の人のことを気にかけたことがなかったからだ。思わずここにいない陸君に、「やったよ。」と知らせてやりたかった。1306192

 (左から・・ひょうきんな碧君・レオ君・・そして笑っている大空君)

終わり時間が迫っていたけど、男の子達はソラ君と遊んだ。大空君と陸君の名前にアオイ君の海の色「碧」を足せば地球になる。さらにもう一人は百獣の王レオ君だ。

私はみんなの頭をなでつつ言った。「あなた達みんなを足せば最強なんだよ。」

お迎えのお母さんに、「彼は今日自立しました。」と伝えた。女の子たちは側でニコニコと同意して頷いている。発達ってなんだろう。障害ってなんだろう。辞めた仲間がいつかまた戻ってくることを願う心は何よりも健康だと思った。その証拠に描きかけのりっぱな絵がのこっている。色をつけたら彼の許しをもらってご披露したい。

「一年かかりました。」お母さんが泣き笑いの顔で見送りのみんなに手を振っていた。

(※この内容は、保護者様の了解をいただいて掲載しております)

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コメント

こんにちは。
地球になる子供たちのパワーはすごいですね
大空君の自立と手を振るお母様…感動しました。
アトリエの中の素敵な地球
素晴らしいです゜.+:。(*´v`*)゜.+:。


今日「ちっちゃいおじさん」の話を書きましたが、
ソラ君にとって、陸君がちっちゃいおじさんだった
のかな…なんてちょっと思いました。
地球と百獣の王がいるアトリエ、
素敵ですね

誰が「発達」に『障碍』なんて文字をくっつけたんでしょうね。

発達のペースはそれぞれなのに、同一の速度を求めるから不自然なんだと思います。

それにしても、そら、りく、あお、れお・・・・と、よく揃いましたね。w(゚o゚)w
みんな素敵な名前をご両親からいただいて、みんな地球の大事なこどもたちですね。(o^-^o)

ずっか様
ありがとうございます。
子ども達同士のかかわりの中でこそ 子ども達みんなが大きくなっていくように思います。いろいろなことを比べたり うちの子は一番なんて小さくまとまるのは絶対ダメですよね。地球の子ども達をお預かりしているようなきもちです。
ずっかさんちの  地球のこどもたち。今のままでオーケーですね。
トトロが肉球 じゃなくて//太鼓判をおします。ペタン=3

くまきろり様
ありがとうございます。
ホントにお互いの存在が お守りのような心強さみたいです。
おとなだって 見てくれている人に向けて がんばれますよね。
応援団を自分でつくって 人のことも心配して そうやって弱い者同士がやっていけば こんなに強くなれます。トトロはそれを近くで見ている係です。ちっちゃいおばさんみたいにね。

くまたろう様
同感もいいとこです。
しかも 障害という文字を障碍としたところで 当事者がさわやかになるわけではありません。発達は身体能力の弱い私なんか、人は自分よりいっぱい努力してるとばかり思ってましたから、生まれ持つ個性特性などと気がついたのは大人になってからです。それぞれのテンポで それぞれにしか出来ないことに気づき、認め、助け合う。卑下も自慢もいらないから、ひとときが楽しくてまた会いたい人がいることの幸せ。そんなとこにしたいです。地球のこどもたち。名前負けするんじゃないよっ、ってときどき言ってます。アハハ

大空君の心の中には沢山の思いが詰まっていて、出口を探していたんでしょうか。
トトロ先生やお兄さんお姉さんやお友達が扉をそっと開けるお手伝いをされたんですね。
いい笑顔に私までつられて微笑んでしまいました。

りんふう様
ありがとうございます。
出口や入り口を探している子はきっとたくさんいるのでしょうね。
ゆっくりと自然に一緒に歩いてみればその子だけの秘密の花園にたどりつくような気がしました。期間を決めずに一緒に歩くのが一番なのかな・・と今回子ども達から学びました。不安だから表情がなかったんだと思いました。おとなもきっとおんなじですよね。豊かな表情は安心や自信から生まれる喜びのカガミなんでしょうね。

こんばんは!

大人には大人の世界があるように、
子供にも子供の世界があるんですね。

大人では解決できないことでも、
子供同士なら、同じ世界で生きる仲間となら、
変わっていける。

写真の笑顔を見て、ちょっとそう思いました。

きつじー様
私もそう思います。(*゚▽゚)ノ
そして それは多様に分類される「おとな」でも。ですね。
感性のリズムがある程度似てないと わかり合えないことも多々ありますね。子ども達はやはらかく 且つ 広く受け入れて 伸びシロの可能性が多いと感じます。おとなが名付ける「○○障害」という言葉を打ち破って大きくなってほしいと思っています。コメントありがとうございました。

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