五月のアトリエ
旅から帰って一番先に出かけた先は、連休中の展覧会ふたつ。どちらも最終日の5月6日に盛岡みやげを持って駆けつけた。
何らかの障害と共に生きる子ども達ばかりにマンツーマンで絵を指導される「アートスペースからふる」の若くて静かな情熱家、妹尾先生の「僕らのきせき」という作品展だ。3年前にもおじゃまして、文字通り奇跡のような作品群に圧倒されてからファンになった。うちのアトリエに来てくれていたS君をそちらに紹介して一緒に訪ね、お願いしてから一年が経ち、S君が案内状を持ってお母さんと私のアトリエにやって来たのだ。
「せんせい,来てね。」数年に一度のその展示は今年もカラフルで、作品一枚ずつにその子の良さを紹介する妹尾先生のメッセージがついていた。手をギブスみたいな包帯で覆っているから「どしたの?」と言うと、腱鞘炎だった。手をうしろにして写真を撮った。大量の作品とその準備を何ヶ月もかけてほぼ一人でされたにちがいなく、私も自分の個展と子ども達の展示を一度にするからよくわかる。本番よりも準備が本当に大変だし、社会に奇跡を伝えて障害と生きるひたむきな子ども達を世の光に・・と、ちいさく灯火をたやさぬエネルギーを弱々しい彼女が一途に続けていることの凄さにいつも感動する。
盛岡のお菓子やら陶芸のペンダントをお祝いに渡して、今度は何十年も続けて来られた絵の教室を閉じるとの便りをいただいていた画家の原田マスミ先生の生徒展へ。パワフルな横浜生まれの方で、子ども達の教室をしている同士の共通の喜びや悩みも話しやすかった。私もいつかはこんな日が来るのかな、と複雑な思いでギャラリーを訪ね、ご自分の生徒達と最後の時を過ごしておられる原田先生に挨拶をした。とても喜んでくださったから行って良かった。「続けられるだけやるのよ。」と言われて、始めることより終わることの難しさを痛感。いくらトトロでもこればかりはわからないから、精一杯やろうと思った。最近あちこちの絵の教室が閉められているという。
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さて週明けから、修学旅行や連休中の旅のみやげをうれしそうに持って、また子ども達がツバメのように帰って来出した。ちょっと連休シフトで間を開けただけなのに、欠席ナシのな つかしそうな顔だらけ。ヘトヘトのときでも不思議にこの顔を見るとエンジン全開になるからありがたい。
「せんせい、はいおみやげ!!」 「ありがとうね。どこ行って来たの?」 「えーと、えーと あれ?どこだったかいな?」 「わかった○○高原でしょ?」 「えーーーーっ! なんでわかるの?すごい なぁ。」・・・(だって○○まんじゅうってかいてあるし・・・・。)
旅の話をし、サザエさんの話をし、東北の話をして「とっても描きたいものを描いて、まあゆっくりしんさいな。」というと、まるで温泉にでも入ったような顔をして夢中で絵を描いていた。(久しぶりの再会一年生の大胆な絵)
(こっそりと 母の日カードをつくる カッパちゃんことゆきなちゃん)
その中でひとり、3年前に部活のバスケが忙しくてアトリエを辞めた男の子が「またアトリエに来たい。」と帰り咲いた。お母さんと兄ちゃんを送ってきた小さな妹が私に手紙を渡したので読むと、「せらくんをまたおねがいします。あんじより」と書いてあるではないか。またアトリエに来ることを家族で毎日相談していたとのこと。
(3年ぶりに野鳥の絵を何枚も描いた せら君)
あのうれし泣きしていた「りょうなちゃん」は読み聞かせをする私を真似て、みんなに絵本をよんでいるし、みんなもそれを聞いているし・・・。
母の日カードをみんなして相談してつくっているし、相変わらずの笑い声が5月のアトリエを包み込んでいた。(あの妹と一緒に岡山から来ている 兄ちゃんのゆうま君)
金曜日には、なんと2月の東北弁ライブのときピアノを弾いた平尾香奈恵さんが、大阪でプロ活動中のシンガーソングライター御舩里帆さんを連れてゲリラ訪問。土曜(5/18)に二人とも里帰りコンサートに出演するとのこと。千客万来花盛りで、新緑シャワーのような毎日が帰って来た。会いたい子はみんなおいで・・。
(左が東京で活動中の作曲家平尾香奈恵さん、真ん中が大阪を拠点に活動中のシンガーソングライター御舩里帆(種まきピアニストりほ♪)さん。ともに鳥取市生まれの若手アーチストだ。右はおなじみアトリエトトロ)
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こんなに絵の教室やアトリエがあるなんて、アトリエトトロさんを通じて知りました。ビックリです。
障害のある方を支えたり、様々な思いで指導する方、またそこへ集う生徒さん達との交流、地域の豊かさがうかがえます。
投稿: エノッチ | 2013年5月18日 (土) 09時04分
エノッチさま
ありがとうございます。
自分のアトリエだけではなくて、色々な考えで子ども達と関わる方たちを知ろうと思って 行動しているところです。どの道 多様な方達と知り合うと世界が広がります。子ども達はみんなして見守りたいと思うから。
さてさて アーチストは生まれるかな? まずは 優しい子を育てたいですね。
投稿: アトリエトトロ | 2013年5月18日 (土) 13時44分
トトロさん、元気もらいました。
また頑張ります!
投稿: くまきろり | 2013年5月18日 (土) 20時42分
くまきろり 様
ありがとうございます。
私もコメントに元気もらいました。
また 頑張っています(*゚▽゚)ノ
投稿: アトリエトトロ | 2013年5月18日 (土) 22時11分
子供達の絵はみんなカラフルで楽しそう。
絵をもっている子達の笑顔も素敵です。
その裏に先生方の並々ならぬ努力の結晶があることを知り、頭が下がる思いです。
りょうなちゃんが読んでいるのは「こぐまちゃんのホットケーキ」じゃないですか?なつかしいです。
娘達も大好きで小さな頃、寝る前などによく読んでやっていました(その彼女たちももうアラサーですが)。
投稿: りんふう | 2013年5月18日 (土) 23時16分
りんふう様


ありがとうございます。m(_ _)m
五月からは一層カラフルになるようです。自然の息吹が気持ちにストレートに反映して、感情も豊かになる季節です。私の場合はこれしか出来ないからアトリエを一生懸命やっているのですが・・。やっぱり人間を伸ばす仕事ってなかなかエネルギーが必要で、絵本作家の皆さんもすごいなぁと思いますよ。こぐまちゃん うさこちゃん 変わらぬベストセラーです。その通り! シリーズの中で人気№1のホットケーキです。りょうなちゃん 読み聞かせとても上手いですよ。あらさ−の卒業生も未だに絵本は好きですよ。一番美しいお年頃ですね
投稿: アトリエトトロ | 2013年5月18日 (土) 23時30分
新学期が始まって連休も終わり、子供達も落ち着いて創作活動に専念できますね!(^^)!
うちのかっぱ娘、内緒にしてた割には我慢しきれず、帰りの車の中でカードをくれました(笑)
りんごの細かい線を1本、1本アトリエの時間をめいっぱい使って描いたのとのこと。
絵を見ながら成長を感じた母でした・・・☆彡
投稿: かっぱのおやこ | 2013年5月20日 (月) 16時23分
かっぱのおやこ 様
と言ってますよ。理由があるはずだ、と言うと しーーーーん・・・。たまには ほめて下さいね。トトロがかわりにお願いしまーす。
りんごの皮を剥くように、あるいはロクロをまわして入れ物を創るように芯を決めたらクルクルと描いていけば 丸い立体が出来るよ、と 教えて見たら カッパちゃんはまりました。
どの子もガマン出来ずに 帰りに渡したらしいです。お母さんに喜んでほしい と いうのは みんなの永遠の願いのようです。あー それなのに
毎日怒られてる~~~~~
投稿: アトリエトトロ | 2013年5月20日 (月) 16時50分
生活や社会の不安定な時代に、家族、学校以外の人間関係を親が考える時代になりました。
お稽古事も送り迎えが出来ず断念する子供たちも多くなりましたね。。
子供たちの笑顔に心安らぎます。。明るい色使いは、子供の心の色ですね。 ^^
投稿: アナログ | 2013年5月22日 (水) 21時21分
アナログさま
コメントありがとうございます。何年もご家族で手分けして送り迎えされる姿に 本当に頭が下がります。ここは母親の勤労率日本一だから、土曜日希望が多くてクラスの振り分けに苦労してます。「楽しかったよ。」と言う子ども達の笑顔が 親の皆さんのエネルギーになるのでしょうね。
親の心子知らずで「もうお迎えに来ちゃったのか−」(-ε-)などと好きなことを言っています。
ちゃんと 心豊かで 元気に大きくなって欲しいものです。
うれしいと たくさんの色を使って 本当に楽しそうですよ。
投稿: アトリエトトロ | 2013年5月22日 (水) 21時45分