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2013年5月 6日 (月)

旅・・・その1

三年ぶりに故郷行きを果たしたので、旅の話を書こうとするけれど、連休直前の土曜のアトリエのことがどうしても省略できないので、プロローグとして書いておくことにする。

4月末の土曜のアトリエは、続きにやって来る連休の心楽しさもあってか、みんないつにも増して楽しく絵を描いた。二つ目のクラスは4時半からで、岡山県から13年間も続けて通う姉妹もいたりして落ちついた雰囲気で過ぎていく時間の途中、「こんにちはぁ。」と高校生の男の子の野太い声がした。

ちょっと見ただけではわからないほど成長していたのは、5年前に中学に上がるときアトリエを去ったケンジ君だった。高校3年になった彼を「久しぶりだねぇ。入って入って!」と招き入れると、「お金がなくて、でもおいしいから。」と100円の駄菓子チョコの袋を差し出した。
「あのとき、中途半端な辞め方をしていたので5年間ずっと会いに来たかったです。」
ハキハキとした兄ちゃんの後ろで、あまり声も聞いたことのない印象だった彼が、笑顔さ え浮かべながら話し出した。連絡せずに時折欠席することを注意したとき、本人ではなくお母さんが「この子はいい子です。」と言いに来られて、本人が続けたいのかどうか聞こうとする私に、彼ではなくお母さんが、「ご迷惑をかけるので辞めさせます。」と、あっけなくアトリエを離れてしまったのだった。お兄ちゃんのほうは高校3年の終わりまで続けて、ついに日本画の入り口のような作品を描くようになり、大学は学芸員のコースに進んだ。

一方、どうしても自分の本音を出せずにウロウロしたままで途切れたケンジ君は、「あのときは、母が大変失礼してしまい、自分もまだ自分のことをはっきり説明できなかったから‥謝りに来ました。本当はアトリエが好きだったから。」と明るい顔で語っている。

絵を描いている子ども達の中に入れておやつを共にすると、テキパキと手伝い最後までみんなと遊んでくれた。進路は決まっていて看護師になるという。針灸や東洋医学も勉強する大学に進むから「先生がどこか痛いときは治してあげます。」と真剣な顔。小学生の子ども達は感心して聞きながら、「僕は何を治す人になろうかなぁ。」などと言っていた。彼がボンヤリとしたイメージだったのは、ハキハキした兄ちゃんと先に語ってしまうお母さんに臆して「自分」をつかめなかったからだ。

その日お迎えのご家族が子ども達を連れて帰られたのに、高校生達は帰ろうとしない。みんな自転車で来ていたし彼のことを思い出したようだった。残った子ども達でケンジ君と写真を撮した。みんなが帰って行ってから、その日も手伝いに来ていた陸君と共に連れ出して、ふたりの家に連絡。おいしいと子ども達から聞いていたパスタ屋さんに行ってごちそうした。
1305061(後列右から二人目がケンジ君)


「子ども時代の印象で人を決めつけちゃいけないんだね。」と言うと、「大きくなったら絶対一人で謝ろうとだけは決めてました。」と彼。人は成長するのだ。
陸君が画家になりたいことや、ケンジ君が京都で勉強することなどの夢をオードブルに三人のテーブルは盛り上がった。私が旅に出てしまう前に来たことを二人は「トトロの奇跡」と言った。「会いたかったです。」と何度も口にして、陸君は「わかる。」と言った。アトリエをしてきたことを故郷で胸を張って語れるかな、と思った .....

その二日後、鳥取を午前中に出発。6時間後リニューアルしていた東北新幹線に乗り換え て旅はフルスピードで始まった。・・・・・・・つづく
1305062

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コメント

長旅お疲れ様でした。
ケンジ君のお話、子供は大人が思っている以上に
いろんな可能性をもっていると感じました。
ケンジ君ももともと持っていたものが、立派に育った
のですね。ちょっと今の自分の不甲斐なさを恥かしく
思います。トトロさん、ごめんなさい。少しだけここで
泣かせてもらっていいですか…?

くまきろり様
帰って参りました。
直前の出来事でしたが、このことは本当にびっくりして 感動し反省もしました。おとなも含めて みんな 成長したり変化するものだから。一度だけのことなどで 人を決めつけちゃいけないと思いました。清々しい気持ちで旅に出ました。
ここでよければ なんぼでも 泣いてけろ。
そして また がんばっぺ.

旅行前にも、感動があったのですね ^^ 
 子供を一生懸命、育てている親が気付かない落とし穴。。言葉で表現出来ないと・・・振り返ると反省させられる、ひとコマ・・・
 親の反省も大切ですが、でも、ケンジ君のように、自分の言葉を伝える子に成長した事が宝ですね  (^^♪

アナログ さま
コメントありがとうございます。
だから この日子ども達と話しました。「今は上手に伝えられなくても。そのとき思った大切な気持ちは忘れないでね。いつか こうして伝えられるようになるから。」と。お母さん達の中には、注意されると(余計なお世話。我が子は自分で育てます!) と思われる方もいて、その場から離れようとされる場合も多く、恥ずかしいと思うのが先に来るようです。でも 子ども達は あとから(注意してもらった)と感じ成長する子もいます。
なかなか大変ですが、やっぱりトトロはダメなことはダメ と伝えようと思います。だって愛してるからね。やれやれ

トトロさん、変なお願いしてしまって、ごめんなさい。
おかげさまで、また頑張れそうです。ありがとうございました。

くまきろり様
いえいえ とんでもありません。
いつでも 心を休めにいらしてくださいね。
わたしも くまきろさんのブログでホッとさせていただいてますから。

 うちの長女も家にいる頃は口ベタで、引っ込み思案だと思っていたのですが、私が先に口出し母ちゃんだったせいみたいです。家を離れたら、けっこう社交的でハキハキしたとこもあるんだなとわかりました。子育て中はわからないんですよね。
 ケンジ君が心に秘めた思いをちゃんと実行したことがすごいなぁと思いました。

アヤドンさま
なるほどぉ。
アトリエの子ども達、特に上の子がモジモジちゃんのケースが多いのは初心者マークの親ごさんが先に先にとやってあげたり 言ってあげたりしてますよね。私も小さい時は超モジモジでした。ケンジ君は真ん中の子ですが、兄ちゃんのキャラが強くて「あっ,君もいたの?」という感じでした。いろいろな苦労が彼を成長させたのでしょうね。5年後にまた会いに来て謝るなんて、私こそ頭が下がりました。男らしいですよね。
可愛い子には旅をさせよ・・ですかね。やっぱり。

ケンジ君はしっかり自分で考えて5年分の想いを行動に移したんですね。
子どもは親が思っている以上に色々と見ているし考えているんですよね。わかっているつもりでもつい先に口を出してしまったり・・
反省です。

ひろ衛門 さま
反省できるおとなって、なかなかいらっしゃらないんですよね。(きっぱり)前記コメのアヤドンも ひろ衛門さまも キッチリと反省されますよね。私は なんとか自分は悪くないと言い訳を考えてしまいますが、子ども達からこうして教えられると素直に反省出来ます。すなおに反省させてもらえる相手が「師匠」なんだと思うので、やっぱり子ども達は私の「師匠」です。ありがたいなぁ・・・
旅の続き お楽しみに^^・・・・・。

ケンジ君は芯の強いお子さんだったのですね。
トトロ先生とアトリエが本当に好きだったのに、どうして言えなかったのかしら?
↑これって大人目線ですね。
私の二人の娘がいます(年子でもうアラサーですが)。
下の方がかなりの不公平感を持って過ごしてきたことを最近知りました。
親としては絶対そんなつもりはなかったのですが、子育て真っ最中の頃は子供の気持ちを考えてやるゆとりがなかったなあ、と反省しています。
ケンジ君のお母さんも今、そうかも・・・?
「トトロの奇跡」で再開を果たした彼の夢が叶いますように。


りんふう様
いつもお読み下さってありがとうございます。
当時、彼をとりまく環境に 簡単ではない色々なことがかさなっていて、お月謝を払ってもらっているから 辞めたくないと強く言えなかったらしく、自身の言葉も持ち合わせていなかった・・とのことです。このとき、トトロ先生にごちそうになるから と 電話したら おかあさんから「トトロ先生にくれぐれもよろしく。」との伝言がありました。だから、そうかも。
トトロの生き甲斐は、夢の叶う現場を見届けることです。ずーっと生きてみたいです。

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