白い花
作品をお届けするときは、たいがい宅急便や小さい額なら郵パックを利用しているのだけれど、先日はお宅まで持参した。1月の個展の時に追加のご注文をいただいた作品の殆どは2月末までとか3月末までとか期限があったので、私の中での個展はまだ終わっていなかったのだ。
特大の60号で春夏秋冬を一枚の中に表現した『季節の中で』という作品の前からその方は動かず、何度も会場を巡ってはまたその絵の前に佇(たたず)んでいらっしゃった。
最終日のお帰り間際に、「あの絵のような雰囲気の絵で、大きさは半分で、雪の残る山が好きなので、描いて下さい。」
とご注文。う~~~む。難しい。2月3月の締め切り仕事で毎日描いていたけれど、この大作はなかなか進まずいつのまにか世の中は春。
花がだんだん咲いてくる風景に助けられて、ついに完成し、お届けすることが出来た。
住宅地のナビを頼りに夜道を行くと、川沿いに白いワンコを抱いて迎えに出ていて下さった。どうしても最後に描き足したくなって、山のコブシだか木蓮だかどちらにも見える木に白い花を小鳥のように咲かせたのだが、箱を開けて彼女は驚嘆の声でひとこと。
「これです。これと同じ風景をおととい山に行って見て来たばかりです。白木蓮が見事だったんです。」
それは描いたものにとって何よりのお言葉だ。「ありがとうござます。」
なんとなくさみしそうだった1月の個展の時の印象が、ぱぁっと日が射したように明るい表情になられて、白いワンコの「そらちゃん」ともども、いつまでも見送って下さった。
「明るい色の絵を」とご注文される方が多いのは、みんなどこかしら哀しいことがあるんだな、と思って、外でスケッチするわけでもないのにその人のことを静かに深く思うと、絵が浮かんで来るのがいつも不思議だ。
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例の「りょうなちゃん」と、兄ちゃんの道具で見事アトリエ入りした「はるかちゃん」の二人は、その後同じクラスで、気持ち満開の時を過ごしている。
うれしい空気はみんなに広がって、屈託のない笑い声で中学生達も「癒されるぅ」という。
春休みの間家族旅行でお休みしていた男の子からも元気なファックスが届いた。なるべく出欠の連絡は本人に責任をもってやらせていただくようにお母さん達に頼んでいるものだから、気持ちのこもった誤字の修正跡がかわいいファックスや緊張した声の電話のやりとりはとてもいい。いつのまにかいろいろとおぼえていくから、まず自分のことは自分で出来る練習をアトリエでしちゃえばいいと思っている。
今日は私の誕生日だったから大学生たちが遠方からメールをくれた。
「先生、いつまでもそこにいて下さい。」。
そうだね、ありがとうね。明るい絵を描きながら小さい子達に助けてもらって、ずっとここにいたいと思った。
桜も終わって庭の小花がきれいに咲いた。静かでいい誕生日だった。
ご依頼された方とトトロさんの気持ちが、ふっと繋がったんですね。白い花。
ひとの心って不思議なことが起こりますね。
投稿: くまきろり | 2013年4月13日 (土) 21時34分
くまきろり様
本当に心って不思議です。
よくこんなことがあって 絵描きの私がたすけられています。
きっと 人の思いが伝わって 絵が 完成するのだと思います。
白い心で 絵を描き続けたいと思います。
コメントありがとうございました。
投稿: アトリエトトロ | 2013年4月13日 (土) 22時20分
お誕生日おめでとうございます。o(*^▽^*)o
春の甘い空気が流れ出てくるような素敵な絵ですね。
雪山に白木蓮。
こちらの春もまさにそんな風景です。
まだまだ、冷たい風も吹き付けますが、花の色はよりあざやかに。。
その春の花々の逞しさに、元気が出ます。
投稿: くまたろう | 2013年4月14日 (日) 09時52分
くまたろう 様
(=゚ω゚)ノ o(_ _)oペコッありがとうございます。
子ども達は遠慮して本当の歳は聞かず、トトロ年齢の1500さい とか3000さい とか言うようになっちゃいましたよ。(人><。)
くまたろうさんのフォトブログ「里山の風」にいっつも出かけて風景を眺めつつ絵を描かせていただいています。いろいろとミックスさせて信州と故郷の東北とここ鳥取の風景が私の中に混在します。ありがとうございます。また信州の春見せてくださいね。
投稿: アトリエトトロ | 2013年4月14日 (日) 16時50分