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2013年4月25日 (木)

学生服

アトリエまで辿る道の途中の並木道「ロマンティック街道」は、新緑シャワーのまっ最中だ。こんなにあやふやな季節でも、いつもの風情が初夏を運ぶ。

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四月いっぱいをもってアトリエを卒業する「耕平君」最後の日のこと。中学校に上がって水泳部に入り、部活もボチボチ始まりかかった様子で少し遅くなると連絡が入った。アトリエの小学生達は口々に彼が去ることを残念がった。
月曜クラスは昔は存在しなかったのだが、突然転校生が増えた年があって、期限のある彼らにとって僅かの間でもこの地に滞在期間中、アトリエでの日々が小学校時代の貴重 なメモリアルになるからと、絵の好きな子のためにご両親が探してたどり着いて下さったのだった。信州から、北海道から,名古屋から、個性的な子ども達ばかりだった。

お姉ちゃんが先にアトリエに来ていた耕平君が小学校に入ったとき、地元の元気な子が欲しかった私は、「今なら席がありますが・・。」とお母さんに声をかけてみた。それから彼は明るい声でハキハキとアトリエの一員となり、やんちゃぶりを100%発揮、どんな転校生とでも友達になった。あのモンゴルのサローラちゃんとは家族ぐるみのお付き合いで、彼のお家でご飯をもてなしたり、それはそれは素適な広がりになった。
とりわけ私が助けられたのは、障害を持つ子が何人か仲間入りしたときのことだった。自分の絵は二の次にして彼らのめんどうをみてくれたのだ。それを見て他の子も見習い、ほんとうに自然のままにダメなこともダメと子ども達同士で教え合い、愛が形になったようなクラスを耕平君が「しょうがねぇなあ。」といいながら築き上げたのだ。しかも気負いなく普通に。

自分ではちょっと難しいと、「先生!」と私を呼んだ。私はその間他の子の指導が出来た。「ちょっと身体が弱いんだって。」とか、「少しだけ字を読むのが遅いんだって。」とか、「彼は空気が読めないから、かわりにみんなして読める空気をつくりなさい。」とか、私は真実を全員に伝えた。
「そうか、そりゃなかなか大変だな。」とみんなで助けてやっていくと、どこかしらスイッチがはいったように全員がいい絵を描いた。耕平君がいなければできないことがたくさんあったし、私は大人の限界も教えられた。何かしてあげようと構えているうちは,思い上がりだと気付くことが出来た。転校生たちもみんなしてそんなクラスをつくって去って行くとき言ったものだ。「すごいクラスでした。忘れません。」と。

さて、耕平君のこと。別れの時間が来てしまった。小学生達は彼の真新しい学生服をまぶしそうに見つめ生徒手帳などみせてもらったりしている。
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記念にと持って来てくれた可愛い鬼っこの素焼きの人形の意味をみんなに教えているから、私はお迎えのお母さん達に「ちょっとお待ち下さい。いま大事なシーンだから。」と待っていただいた。一人一人と握手をして、最後に「先生!」と私の手を握りつつひとこと、「また、すぐ来てもいい?」。笑いながら私もひとこと、「もうスタッフになって、いつでもおいで。中学校でも弱い子見つけたら助けるんだよ。」 「はいっ。」
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驚くほど学生服がよく似合っていた。子ども達は「あとはおまかせーーーー。」と言ってVサイン。(ホントかいな?) たまにアトリエに彼のような子が育っていることがある。ご家族が働き者でじいちゃんばあちゃんが居て、みんな仲良しというのが共通点だ。少しくらい何かの障害を持つ子が入っても巡り会えた仲間によって、こんなにとけ込んで泣きながら別れを惜しむこころが育つものだ。大事なのはお互いにカミングアウトして、助け合うことだ。

ん? つまり彼はトトロ先生を助けようとしたのね。大好きなアトリエのために。アーーーーーッ!今頃気付いてしまったとは。
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ありがとうね。会いたくなったらまたおいで。
その日花粉症のふりをしてみんなの目はずっと赤く潤んでいた。学生服の背中が遠ざかるのを全員でいつまでも見送っていた。

 

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コメント

今日もいいお話を読ませていただき、ありがとうございました。
ほんとに素敵な心のふれあいですね。

windさま
ありがとうございます。
私はまるで恋人が去って行ったように寂しかったです。
いつもこうして巣立ちがあるから、帰って来たときに居心地のいいアトリエにしておこうと 背筋が伸びます。ホントに子ども達にはかないませんね。未来に光あれと祈るトトロです。

初めてアトリエからいただいたお手紙の表紙に書いてくれた『耕平君』ですね?(◎´∀`)ノ
中学生になったのですか。おめでとう~~♪

素敵なみんなのお兄さんだったんですね。
これからも、頼もしい先輩として顔を見せてくれるのかな。

新緑のきらきらと、子どもたちのきらきらが、まぶしい5月を迎えますね。

とにかく、頼もしい!

自分、あの年頃は・・・恥ずかしい(><)

毎回のことですが、子供たちに感心したり、胸が詰まったり…
でもそれには、トトロさんのちょっとしたひとことや心遣いが
効いているのだと思います。
耕平君の学生服姿、頼もしいですね。

くまたろう様
そうです そうです あの 耕平君です。
最近急に背が伸びてきて少年らしさに磨きがかかっています。しかも彼のお家は あの おせんべい屋さんなんですよ。
誰かがアトリエになにかをして下さると 彼と陸君が「お礼状書こうぜ。」とやってました。みごとな成長ぶりです。みんな「くまたろうさん」のことを忘れてませんよ。特にアトリエにお菓子を下さった方のことは全員がおぼえていますヽ(´▽`)/
さてさて 私も次世代育成にはげみましょうっと。お元気で!!(=゚ω゚)ノ o(_ _)oペコッ

エノッチさま
(*^ω^*)ノ彡 みんなが自分の「あの頃」と比べたら、本当だ・・・こんなことできたかなぁ? でも 近くにトトロ先生いなかったし。

そうして我が身を省みる エノッチさんも素適だと思います。

くまきろり 様
ありがとうございます。これ ヒヨコロさんにお見せしたいですね。
世の中は弱い者イジメが多すぎます。みんなが弱いところがあるのに。
また 子ども達に教えられた トトロです。いっしょに育っている感じがしますよ。

みんなで助け合って、スイッチが入っていい絵が生まれる・・・
子供世界のパワー全開ですね。
トトロ先生の笑顔、素敵です。
耕平くんが実りある中学生活を送れますように。

りんふう様
ありがとうございます。
スイッチって どこに潜んでいるかわかりませんね。
お互いを思って 動くと スイッチが入るのかな・・なんて思っています。真っ直ぐな子なので 挫折もあると思いますが  日向の道をすすんで行くと思いますよ。トトロ先生は笑顔だけが取り得です。m(_ _)m

 ホントに学生服がよく似合いますね。小学生の日々をちゃんと過ごして成長して、自分で区切りをつけて新しい生活にとびこんで行ったんでしょうね。その姿を、小学生たちがちゃんと見ていて、見習って、続いていくのが嬉しいですね。
 親心では、この時間がずっと続いてほしいと思っているとき、子どもがちゃんと区切りをつけるその潔さに感心することがあります。子どもはすごい勢いで進化しているからなんでしょうね。おめでとう、耕平君。

アヤドンさま
お久しぶりです(◎´∀`)ノ
ありがとうございます。チラ見しつつ(かっこいい!)と思える 見習うべき先輩がリアルにいてくれるのが 一番いいことだと思っています。
あこがれはみんなを高めてくれるから、近くに(自分もこうなりたい)と思える人のある環境を さりげなく 提供しようと クラスのメンバー設定に一番気持ちをつかっています。かく言うトトロもみんなをガッカリさせないようにシャンとしなくてはね。

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