もうちょっとだけ
『 またあした! ともだちの目にあかい雲 もうちょっとだけ 遊んでいたい 』
アトリエの5年生、ミカちゃん作のこの短歌が「第18回大伴家持短歌大賞」で、児童生徒の部門日本一に選ばれた。今年のお題は「雲」だった。新聞で見つけて電話をすると本人は淡々と照れていて、「もうちょっとだけ遊びたかったから、これを書いたの。」と言った。
何度読んでもいい歌なので、教室の度にみんなに紹介して、どうして日本一かを説明した。
「スポーツでも絵でも音楽でも文章でも、多くの人の心に(ふーーーんすばらしい)という感動の情景が届いたから、それが一番たくさん届いたら日本一なんだよ。」 「賞をいただいたかどうかよりも、ほんとうに素晴らしいか、みんなの心が動いたか・・・なんだと思うよ。だから、拍手しましょう。」 パチパチ・・・。
実は以前、本人のミカちゃんはどうしようもなく自慢屋で、しかもそれは無意識で、どこに連れて行ってもらったとか、何を買ってもらうとかの話題ばかり得意気に話す子だった。どうしてか聞くと、どうも家の人が「テストをがんばったら○○を買ってやる。」と、くすぐるらしく、私はそれを聞いて激怒したことがある。「一番大切なものは目には見えないんだよ。お父さんにも言っときなさい!!」、などと星の王子様のように諭し続けた。お金で買えないものの価値の話をすると、他の子たちが肯いても彼女だけ解らない時もあった。可哀想なことにお金持ちだったのだ。しかしだんだん自慢しなくなり、どうしても言いたい時は、(これって自慢じゃないよね?)と私に先に確認するようになった。そして根っから親切な本性が出て来て、カードや似顔絵を描いてはみんなに、「はい、あげる。」と喜ばれることを始めたのだった。「あなた、この頃とてもいいよ。」と言うと、「へへっ。」と自覚していた。
偶然だけど、昨日の彼女の土曜日クラスに合わせるように北海道の函館に転校していった姉弟から、たくさんの函館名物おもしろお菓子が届いていた。
みんなでお礼を書こうとすると「心をこめよう。」と言って一生懸命カードをつくっていたのは、ミカちゃんだった。「先生、北海道に梨を送ってね。」と子ども達。「もう送ったよ。でも小さい箱だけど。」と言うと。「大きさじゃないから。」と言われた。
そして、なんと作者直筆の絵短歌をその場で描いてくれたのだった。みんなが本気で声をそろえた。「わーーー、いいなぁーーーー。」とてもうれしかった。先にボスのところへ持って行っちゃってたけどね。
『 またあした! ともだちの目にあかい雲 もうちょっとだけ 遊んでいたい 』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
米子展最後の道連れは倉吉から同行したSさん。私より10才年上のパワフルウーマン。「行かれる際は同行しますから、声をかけて下さい。」と言われていたから約束を守った!
中学1年生から10才上まで年齢の幅が広々とした米子展の道連れ旅の行ったり来たり、車窓の雲がすっかり秋雲に変わってまもなく一ヶ月が終わる。(帰りの米子駅のプラットホーム)
悔いのない日々。ありがとうの日々。もうちょっとだけ、遊んでいたい。
« 友だちは兄弟のはじまり | トップページ | 秋 深し »
私が死ぬ時、私もこんな風に思うのかも知れない。
投稿: aKose | 2012年10月28日 (日) 21時08分
aKose さま
・・・・・・・。
それは とってもいいですね。
わたしも、「まあだだよ。」と言いながら隠れっぱなしの淋しさを想像したりすることもありますよ。永遠にどこかには居るつもりですけどね。
もうちょっとだけって思う間はまだまだってことです。(u_u。)
投稿: アトリエトトロ | 2012年10月28日 (日) 21時30分
ごぶさたしています。
もうちょっとだけアトリエにいたいと思ってました。いつも。
でも、今でもあそこのイスに座って絵を描いていた安心感が心の支えです。
先生、ずっとずっとアトリエに居てください。(ノд・。)
投稿: AKI | 2012年10月29日 (月) 22時37分
AKI ちゃん 様



今日 天気予報で「木枯らし一号」が発生したことを告げていました。
どこかの森のかたすみで ちいさいバレリーナが枯葉の衣装をまとってクルクルと踊っている絵、むかし描きましたね。あの絵をあなたは大好きでした。ことしも久しぶりに描きたくなりました。
また 展覧会には帰って来て下さい。来年は貴女の後輩たちが成人式です。わたしはいつまでもアトリエにいます。またおいで!待ってます。
投稿: アトリエトトロ | 2012年10月29日 (月) 23時23分
この短歌、子どもらしくていいなと思っていたのですよ。
この気持ち、みんな持っているものだからすぐに情景が思い浮かぶし、それぞれの思い出がうかんでくる。本当に良い歌です。絵短歌の太陽のきれいなこと。すてきなエピソードをありがとうございました。
投稿: アヤドン | 2012年11月 2日 (金) 20時17分
アヤドンさま
「夕焼けが 心の奥の窓あけて もうちょっとだけ 思い出の中
トトロ
すなおにブログを書いていると コメントをいただいた時も、子どものように「わーい」と思います。そして、「わーい」で疲れが飛んでいきます。正しいパソコンの使い方ですよね。サンタさんもブログ読んでいるといいなぁ・・・。
投稿: アトリエトトロ | 2012年11月 2日 (金) 20時41分