ともだち
前向きに懸命にやってきても、とうとう自分たちだけではどうしようもないこともある。
手分けして働いて、形のないものに向かううちの会社は、いつもたくさんの方達に助けられてものごとを乗り越えてきた。例えば16日のコンサート。プロのミュージシャンも多数参加するとはいえ、企画制作は殆ど全て自社手製
なので、歩き回って
支援をお願いし、遠大な計画を実行するまでの水面下のドキュメントは、「生活の糧になる仕事」とはかなりかけ離れているものだ。ミュージシャンや絵描きが、地道に働く社会の中で蟻とキリギリスのように遊び暮らすキリギリスに例えられがちなのも仕方がないのだけれど、精神性を持った大切な仕事だと私は思っているし、みんなの心に元気
をもたらすと信じている。
家の稲刈りとも重なって、機材を現地に運ぼうとしていた軽トラックが使えなくなったので、すぐに思い立ち、いつも個展を一緒にして下さる陶芸家の田原さんに電話した。「機材を運ぶから軽トラを一週間貸してください。」 「あ、いいよ。」 「ありがとうございます。」 「がんばれよ。」 たったそれだけのやりとりは20数年来のお付き合いから咲いた会話だ。もちろんいつもご夫婦でコンサートに来て下さる。
東北から鳥取に避難生活のために来られている方達は51家族120人もいらっしゃったから、今回私の名前でお手紙を綴った。
「もしも、行ってみっぺ・・と思われたら、この券を持ってコンサートに来てみてください。楽しいから、ちょびっと元気になるかもしれないから、私も岩手県出身だから。このポスターの絵っこも描いて鳥取で仕事してっから。待ってるから。」と。チラシと手紙と招待券を持って市役所の担当部所に出かけたら、東北避難家族を担当する部署の課長も20年前に絵本や絵手紙の出張講師として私を毎月頼んでくれた気高町のKさんだった。
「かおるさん、一軒ずつ出してあげるから。」
10年、20年と変わらない気持ちでいて下さる方達を表す言葉って、やっぱり「ともだち」なのかな。大好きな人がそこここに偶然のようにいてくれて、いきなり駆け込む私を助けてくださることは、なんとも表現しがたい不思議な有り難さだから、私はそのことをなんとかこども達に伝えようと思う。
助けたり助けられたりは何も災害のときに限らないんだよ・・って。駆け引きや損得のない正直な人間付き合いでしか、そんな温かいことは生まれないんだよ、って。「あの人元気かな?」と思い合えるだけで、滅多に会わずとも何かが通うものだ。ご無沙汰や失礼ばかりの日常だけれど、こんな私でも動き回ればみんなに会える。「犬も歩けば棒にあたる」ってことかな? ちょっとちがうかな?
アトリエの 若者たちもどんなコンサートかわからぬままに,黄色いTシャツ軍団が増殖中。返事は大きく「はい。」 あいさつも明るく、時間厳守。持ってくるものの中に「元気
」というのが書いてあった。
「いい?
みんな合い言葉は、だいじょうぶ・・・だよ。」
かおる先生が「だいじょうぶ !」しか言わなくなったら、それはあまり大丈夫じゃないときだよ。「はいっ。」
なんか みんな今からちょっと緊張してる? 「さあ、一緒に感動しに行くよ 」
絵の教室は普通にやってはいるし、コンサートも全員が行けるわけじゃないんだけど、なんか空気がみなぎってきた。
先日何らかの発達診断を正式に受けて、あまり人の名前など覚えないはずの一年生S君は、いつも寄り添ってくれる高校生画家の陸君の名前をしっかりおぼえた。そうだよ、どこの学校に行くかより、誰と会うかで人生安心するんだよ。
その日は星空になるといいなあ。天からも友だち会いに来ないかなぁ。
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コメント
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「さあ 感動しにいくよ!」という言葉。いいです。僕も行きたいなぁ。
このブログ 泣けます。どうしてだろう。応援してます。先生 お元気で。後輩 ガンバレ。ヽ(´▽`)/
投稿: OB | 2012年9月10日 (月) 22時34分
OBさま
いつもコメントありがとうございます。
応援もありがとうございます。
後輩君たちには「世界中どこに行っても、アトリエにコメントくれるような 心でいてね。」と これを見せることが出来ます。
私もOBたちを 応援しています。「だいじょうぶ 大丈夫
さあ 感動しにいくよ!!!!
投稿: アトリエトトロ | 2012年9月11日 (火) 13時39分
写真をみたらSクン、すっかりアトリエの一員の顔ですね。
以前、「先生のおともだち」として横に座らせてもらって以来です。
いろんな人と巡り合って「ともだち」と呼べる仲間をみつけられたらそれはよい学校に行くよりずっと貴重なのかもしれませんね。
先生のブログを見ていると、子供だけじゃなく、私もこれから頑張るぞって気になります。
16日、素敵な星空になりますように・・・
投稿: かっぱのおやこ | 2012年9月11日 (火) 15時31分
かっぱのおやこ様
をみつけて頼んでいるのですよ。(笑)
陸くんが助っ人に来ることが出来ないときには いつかお願いしたようにいきなり ちょうどいい人
Sくんに限らずどの子もみんな 誰かにに守られて 心とカラダが育つのでしょう。いやな場所には行きたくないと思うから「こども達がやって来ること」それだけを頼りに体当たりで愛してます。
そうそう 今日の日本海新聞の⑧面右上 ご覧下さい。m(_ _)m
では 夢街の星空で待ってます


投稿: アトリエトトロ | 2012年9月11日 (火) 16時20分
名文ブログです。 ほんとうに 気負わずの自然体で こども達とやっていらっしゃることに涙が出ました。感動しに連れて行ける先生がたくさんいる社会をのぞみますね。お金をかけて 子どもにはぜいたくな旅をさせたり 人工的な ○○ランドに連れて行くことを目的にする 考えの浅いバカ親が増えました。天地の声のきこえるトトロ先生と 森のコンサートの手伝いができるこども達は幸せです。障害の有無にかかわらず 子どもというのは 落ち着ける人のそばに集まるものです。星空お祈りしております。・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
投稿: 沖縄のトトロファン | 2012年9月12日 (水) 18時15分
沖縄のトトロファンさま



雨の具合はいかがですか?
いつも文章の行間を適確に汲み取ってくださり、自然体の読み手はそちらのほうです。ありがたくコメント読ませていただきます。
少しだけ年齢がちがうだけで 私とアトリエの子ども達は同格です。お互いの尊敬で成り立っています。森のコンサートの裏方として,白雪姫のこびとたちのように大活躍してれるでしょう。星空よ輝け、と祈るばかりです。あーーーーー沖縄に行ってみたいです。
投稿: アトリエトトロ | 2012年9月12日 (水) 21時06分
出会いって奇跡で大切なものですね。
息子も縁あってかおる先生と出会い、二十歳になった今でもお世話になって・・・
安心する場所って子どもも大人も必要なんですよね。
16日は大丈夫、きっと綺麗な星空です☆
投稿: ひろ衛門 | 2012年9月13日 (木) 15時34分
ひろ衛門さま
いつも どこでも たくさんの方達にたすけられていることを 忘れないでやらなくちゃ と あらためて思いました。きっと星空
きっと大丈夫。みんな大成功。信じて進みます。てるてる坊主プロジェクト開始・・・よろしく o(_ _)oペコッ
ありがとうございます。
今 当日のあれこれを準備していたら、一回目の野外コンサート仁風閣のときに子ども達と亡きナンシーのこしらえた てるてる坊主が出て来て 少し 泣きました。
投稿: アトリエトトロ | 2012年9月13日 (木) 17時03分