天まで届け(後編)
うちとけ合って、真剣に働きながらも笑い声のする黄色い軍団は見ているだけでも飽きない。
ついに2000個の風船にヘリウムガスを入れ終えて、ネットに周到に仕込んだあたりから、一天にわかにかき曇り、ポツン・ポツンとしたたる雨粒
。
1時半くらいになっていただろうか・・・。スタッフルーム兼なんでもルームに入って、次第にザーザー降りになる外の風景に全員無言。先生は魔法が使えるってこと君達は知ってるはず。
「てるてるぼうずを作るよ」
たちまち居並ぶてるてるぼうず。まだ降るか
出演者のゴスペルコーラスの方達が、きれいにヘアメイクを終えて合流。
「何か晴れるうたを歌ってください。」
きのこ型の丸いホールの高い天井に響き渡るハレルヤコーラス。
「あと少し、晴れる歌は?」
いきなりはじまる「♪サザエさん」。手拍子はチームあとりえ。
♪♪きょう~は いいてんき~~~♪のフレーズが3回ほど続いて空を見た私は叫んだ。
「ほら青空がでてきたよ 天が水まきをしてくれてちょっとは涼しくなったね。」
初参加の中1のKちゃんが、か細い声で「ダイジョウブ・・・」と言った。
そう、「合い言葉はーーー?」 あちこちから、「大丈夫!」と聞こえる。声が小さいよ、もう一度。「だいじょーーーーぶ」
晴れ間が広がってきた!天からのシャワーは約1時間だった。
雨上がりのステージから雨よけシートをとりのぞくと、会場ではリハーサルの続きが始まり、もうシャトルバス案内係の加奈子先輩がスタンバイに出発。
「先生、バスの中で歌ってもいいですか?」
いいよ、いいよ、お客さんにワクワク感を手渡すのが添乗員の仕事だよ。私達の古い友だち「ムーミンさん」と、いきなり参加してくれたトモ子ちゃんのお母さんも添乗員。資金の関係で、少ないバスを何往復もさせて県内各地からの夢街ツアーをお迎えするという、頭脳と気転と笑顔の必要な仕事を、大学2年の彼女が引き受けた。完璧だった。
開場の時間が迫り、みんなのアイデアで50個ばかりの風船にヒモをつけて、入り口受付と屋台のテント横にくくりつける。ヒロ・ヤマガタの絵のようだ。
(出合いの森正面入口の立て看板)
(開演までまだ30分もあるのに、こんなにたくさんの人が)
「最後の仕事は、暗い夜道をお帰りの際、お客様の足下を懐中電灯で照らしてあいさつをしましょう。」
「はいっ」
「なんて言ったらいちばん気持ちいい?」
「ありがとうございました。」
「やっぱそれだね。頼みますよ。さあここからは先生は受付から離れないから、それぞれ持ち場についてがんばるのよ。もしお客様の病気やケガを見つけたら、すぐに声をかけて連絡をして下さい。」
「せんせい、森から熊が出んかなあ?」
「そのときは、当日券と弁当をあげなさい。」
「はいっ!」
男の子は全員「会場係」兼「風船係」。女の子は「受付係」兼「お客様係」。
闇に散らばる黄色軍団。コンサートは始まった。
(ソプラノ歌手・寺内智子さんがしっとりと歌う「瑠璃色の地球」。指揮はボス)
(出演者全員による、「古事記」より「饗宴(まつり)」の一シーン。ステージ右上では神主さんの姿も。圧巻のステージ)
(因幡一の宮「宇倍神社」から参上。若い神主・金田祐季さんの宮太鼓)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(そしてコンサートは順調に進み、2時間が過ぎたころ・・・)
「先生、先生
ヒモをつけた風船が垂れ下がって来始めました」
う~ん、どうも夜露と昼間の雨で急激にヘリウムガスがしぼんだらしい。ためしに受付あたりの風船のヒモをはさみでチョンと切ると、ひょよよよと落下。ラストの曲で2000個の風船を夜空に飛ばしてライトアップするために集まってきた「チームあとりえ」。ラストの曲まであと15分。
そのとき、一浪中のサヤカ先輩が、「ひもについてる風船をとめるプラスチックを取ってみましょう。」と、言った。
受付の風船実験を何人かの黄色軍団が見つめる。プラをはずしてみた。ヒョロヒョロと泳ぐように一個の風船が夜空に消えた。
「いける。2000個の風船にはプラも糸もついてない。」
また固まっていた中学生が、細い声で言った。
『だいじょうぶ。』 いつのまにかみんなも言っていた。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ、だいじょうぶ」
そして・・・感動の2時間半。フィナーレ曲「♪星のかけらを探しに行こう」そして「♪プライム」。
風船は、ゆっくりと夜空に舞い上がっていった。会場からどよめく歓声が聞こえた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1600人のお客様、ありがとうございました。夢街応援隊のみなさん。そして愛する「チームあとりえ」、ほんとうによくがんばりました。森の木々も妖精たちも、みんな力を貸してくれたんでしょ?
すべてのことにありがとうございました。
「とっとり夢街コンサート2012」とっとり出合いの森☆星空コンサートは、満天の星空の下で感動の幕を閉じた。
(この写真と上の風船の写真は、「出合いの森」を管理されている谷尾さんというおじさんが、山の中腹に登って撮影されたものです。森の動物たちも、きっとこのように見ていたのでしょうね)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
« 天まで届け(前編) | トップページ | ありがとうの秋 »
先日、トトロから手紙が来ました。
「コンサト、たのじかっだ。まだみだい。 トトロ」
あのトトロも喜ぶ星空コンサート。鳴き声はどこまでも響く
音色と熱気にかき消されたようです。
投稿: 十十六衛門 | 2012年9月22日 (土) 09時51分
*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・*
うわ~~。ぱちぱちぱちぱち!!拍手喝采。
歓声が聞こえてきましたよ~!
コンサート大成功おめでとうございます!
「チームあとりえ」の熱意が天に届きましたね。
みんなで作り上げる力ってすごいな~。
そして、芸術が人に与える力もきっとすばらしかったことでしょう。。
朝から、ぞくぞくっと感動いたしました。ありがとうございました。(o^-^o)
投稿: くまたろう | 2012年9月22日 (土) 10時03分
十十六衛門 殿
こちらにも もののけ姫から手紙がきました。
「生きてて よかった」と。
リーダーありがとう。いつも いつまでも いてもいなくても 貴方はチームあとりえの名リーダーです。
アンコールにお応えしながら やっていきましょう。
また やろうで。
投稿: アトリエトトロ | 2012年9月22日 (土) 13時33分
くまたろう様
感度良好コメント とってもうれしいです。ブログでは全部伝えきれませんが やっぱり人は義務や常識だけで行動するのじゃなくて 思わず手伝ったり 拍手したり 手を差し伸べてと頼んだりしつつ 心の手当をし合うのかなぁ・・・と思いました。無償の熱意を燃やして 涙ぐんで悦び合う子ども達から 私も力をいただいた感じです。今日の教室のとき、生徒のお父さん達から「感動しました。今度から手伝います。」という言葉をいただきました。「チームあとりえ」という会社が出来たりして。
信州の秋の風景 いつも拝見して癒されつつ作品を描いています。鳥も森も生けとし生きるもの 穏やかな秋を祈ります。
投稿: アトリエトトロ | 2012年9月22日 (土) 19時13分
夢街の星空コンサートに行きました。まず黄色のTシャツの若者達がていねいで元気なあいさつをして あちこちに 笑顔で立っていて、車いすの人には駆け寄り、小さな子どもには しゃがんで声をかけていました。聞いてみるとみんな アトリエの生徒で 自分から手伝いを申し込んでさせてもらっている と。かおる先生は受付です、と言っていた顔が「僕たちのかおる先生」がどんなに好きだかわかりました。コンサートは感動して
一年分の元気をいただきました。指揮と全体統括のボスさんはかおる先生のご主人・・・。子ども達がうれしく働くのも納得です。いい一日でした。ありがとうございました。
投稿: すずらん | 2012年9月23日 (日) 17時44分
すずらん様
ありがとうございました。
早いもので あれから一週間です。雨が降ったり寒かったり、今日だったらちょっと大変だったかしらと、先週予定通りに出来たことに有り難さがつのります。あそこの場所でコンサートなどだれもしたことが無く、いろいろと終わってから気づいていますが、お客様が協力して下さっていいひとときになりました。生徒のご家族のご理解があらばこそのチームです。
みんな がんばっていたことのご報告はうれしいです。またいろいろとやっていきます。どうぞおいでくださいね。(=゚ω゚)ノ o(_ _)oペコッ
投稿: アトリエトトロ | 2012年9月23日 (日) 19時22分
だめだ。泣ける。こらっ,後輩、こんなところで力一杯頑張ったって、成績が上がるわけでも 学校の先生が見ているわけでもないんだぞ。全員ちがう学校で、よくチームができるもんだ。しかもなんだかわからないパワーで朝から晩まで笑ってる。かおる先生もパワー出してるし。よくやった!!!!!!!!!! 君達はカッコいい。あと半年大学が済んだら、社会人になるから初任給でアトリエに何か送る。僕も人生で大切なことはアトリエで学んだ。「ステキなバカでもいいんだよ。ずるい利口よりよっぽど好きだよ。」とかおる先生が言ったから
正直にやってきた。役に立つ人間になろうと思った。後輩達のように。コンサート大成功おめでとうございます。
投稿: OB | 2012年9月23日 (日) 20時29分
ステキなOB先輩のコメント、みんなに見せます。ありがとう。
初任給で何か送ってくれるんでしたら、消しゴム10個たのみます。
小さくなってしまって、コロコロと床に落とすと探せないくらいだから。
アトリエでうれしいいただきものは、ティッシュや消しゴムや白の絵の具とかですね。人気の食べ物はおっとっと と なぞなぞのついているアンパンマンキャンディーですね。でも 一番うれしいのは先輩たちが一生懸命生きていることです。疲れたらアトリエブログを読んで元気を出して下さい。小さい後輩たちも明るくがんばっていますよ。私も元気でやります。いつの日か会いに来て下さいね。グッド ラック
投稿: アトリエトトロ | 2012年9月23日 (日) 21時43分
遙か宇宙より お祝い申しあげます。
暑い盛りの準備に思いを馳せた人はどれくらいでしょう。
それを感じさせない一夜を創り上げた想いの深さに敬意を払いたいと思います。若い方達を育て、プロの意識をも呼び覚まし自らの力を出し切って故郷の森に人を集める。天空の星は意志を持って輝きます。いのちの輝きに応えて。ピュアな想念はどんなものより強いのでしょう。二人三脚の夢街号の旅に光あれ。
投稿: 宇宙の旅人 | 2012年9月25日 (火) 19時02分
宇宙の旅人さま
遠い空からのコメントありがとうございます。
ちっぽけな人間の思いあがりを,奇跡的な星空がいさめてくれました。
見守って下さる全ての方へ、とりまく自然の営みへ、心より感謝しています。 ここのブログを読んで下さる皆さんへ,本当にありがとうございます。有り難い気持ちで秋を迎えられることにもお礼申しあげます。
10月のひと月間は 米子の個展です。旅人さまも近かったらお寄り下さい。・・・・近くないかも知れませんが。どうかお元気で。m(_ _)m
投稿: アトリエトトロ | 2012年9月25日 (火) 22時55分
いろいろお世話になりました。とっても素晴らしい経験をさせていただいたのですね。行けなくて残念でした。写真だけでもとってもきれいです。
コンサートの素晴らしさはコメントからも伝わってきます。1600人のお客様、なんとすごいことか。であいの森史上最大のお客様ではないかと思います。森の動物たちもさぞや驚き興奮した事でしょうね。次回、お会いしたときに、岩手に行ってきたお話をしますね。
投稿: アヤドン | 2012年9月25日 (火) 23時30分
アヤドンさま
こちらこそSちゃんをチームあとりえに送迎していただいてありがとうございました。今、また「黄色いTシャツ」へのあこがれで小さい生徒たちが盛り上がっております。そりゃあもう一人一人はとても働きました。まるで絵の教室でなくて体育会系のアトリエでした。だけど風船の色合いとか、ちょっとした張り紙をつくるときなんぞにアートのセンスがピカピカと生きていました。何よりもうれしく働く姿がお客様の心に残ったようです。さてさてみんなで武道館コンサートでもやりますか・・・。
ん???岩手? 行って来られたの?・・・・・いつ?いいな ~~~~~~~。
ご報告楽しみにしています。
投稿: アトリエトトロ | 2012年9月26日 (水) 00時08分
ほんとに素敵なコンサートでした。
裏方の「チームアトリエ」の活躍がブログで拝見できてますます素敵なコンサートになったわけが分かります。
毎年、黄色Tシャツの先輩方の爽やかな挨拶、対応に感心します。
森の中のコンサート、自然と一体化した不思議な空間でした。
きっと出会いの森の「トトロ」も演奏を楽しんでいたでしょうね。
投稿: かっぱのおやこ | 2012年9月26日 (水) 08時44分
かっぱのおやこ様
いつもコンサートを心からお楽しみ下さって、ありがとうございます。
今年は一段と親子連れが多くて、いいね いいね と思いました。
親子で行動出来るのは ほんの短い間だから おにぎり持参でどこまでも
共に感動してほしいと思って 色々企画しています。
チームあとりえ の共通点は 親ごさんがいいです。何が子どもの為なのか深く考えて下さいます。まるで子どもたちが自分でやっているかのように思わせて下さいます。それと 最後まで絵を描ききる子だけだということに この前気づきましたよ。すべてにありがとうです。
投稿: アトリエトトロ | 2012年9月26日 (水) 14時27分