フォト
2025年7月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

« 小さな大事件 | トップページ | 盆のあとさき »

2012年8月 9日 (木)

もの思う立秋

暦が立秋を告げたとたんに、朝夕が幾分しのぎやすくなったから不思議だ。

残暑お見舞い申しあげます。

絵の教室をしていると通って来てくれる子ども達と保護者の方ばかりの世界観になりがちで、「せんせい」という立場に浸りそうで危ない。もちろん学校と違って私の職業は絵描きだから、絵のご注文や個展の仕事でいろいろな方と交わるし、厳しい目でやり直しを求められることもあるので甘やかしの中にいるわけでもないけれど、時には自分の立場を見なおすことも必要だ。

「先生」という呼び名には気を付けないと人として上から見てしまうような間違いをしそうで、しょっちゅう (これでいいのかな?) と自問自答している。

水曜クラスは久しぶりに風の涼しさに助けられてありがたかった。
ところが始まる直前にかかってきた欠席の電話が実にショッキングで心が揺れた。「こどもが楽しくないと言っているのでアトリエを今日はお休みしますが、やめさせます。」という内容。とても楽しそうに何枚も絵を描く小一の男の子のお母さんからだった。今まで通って来た子ども達のなかで、辞める理由に「楽しくない」と言った子はいない。もし家でつまらないと言ったとしても、そのまま私に伝えたお母さんもいない。しかも彼は今年入った子ども達の中でもダントツに楽しそうなのだった。

心当たりはひとつあって、それは彼が前回のおやつのとき、ふざけてティッシュにキャンドルの火を引火させて危うく火事になるところだったこと。私はとてもきつく叱り、周りの子にも注意をし、火の怖さをおしえて、「おかあさんには言わないから。」と約束をしたことだ。いのちに関する危険なので厳しく叱って、二度と火で遊ばないと謝らせた。

賢い子なのでトラウマが尾を引き、また叱られると思って「楽しくない」発言になったのだろう。一年生の精一杯の知恵で、その事件の記憶が薄れるまで休もうと思ったに違いない。

私は彼には絶対言わないでと前置きをして、仕方なくお母さんにそのことを伝えた。「とりあえず、次回は連れてきて下さい。」とも言った。小さい心いっぱいの反省が逆切れして、「たのしくない」と本当に今は思ったのだろうから、お母さんにも伝えてしまったことも私はいつかは話そうと思う。隠して不安、怒られても知られて安心、という本当に複雑なのが人の心だ。平気でごまかすある種のおとなよりはずっと正しい。
楽しそうだった子が、急に「いかない!」と言ったとき、その根っこに何かがあると思っていただきたいものだ。「中くらい」というものが子ども達の世界にはない。100か0だ。

ともかくわけのわからない怒りも感じつつドキドキしながら電話を置くと、みんながやって来た。めんどう見のいい小2のR子ちゃんは多忙で今日はお休み。入ったばかりの一年生モジモジAちゃんと、「なでしこジャパン」のようなファイトを見せる幼稚園年長のYちゃんが、初めての会話を交わしてめちゃくちゃ楽しそうに「動物カフェ」をつくって遊んでいた。高学年は奥で宿題にいそしむ。
1208091
1208092_3

私は「あの子本当にアトリエが楽しくないのかなぁ?」と相談してみると、
「すごくたのしいと思う。」とみんなが答えた。
「先生って、いろいろと悩むんだなぁ。」と高学年に言われた。
そうだよ、人間だもの。一生懸命に悩んで気づくこともあるんだからね。
正しい答えって誰にもわからない。

« 小さな大事件 | トップページ | 盆のあとさき »

アトリエ日記」カテゴリの記事

コメント

「その根っこ」がなんなのかは、大人には計り知れないものがあると、わたしは常々思います。

大人だって、自分自身の心の奥ほど、よくわからないものですし、まして子どもは、伝えるべき「言葉」の数が少なすぎます。
「言葉」はわかりやすいですが「ほんとうのこと」ではありませんよね。
目の奥で訴えるもの、からだで表すこと、その子の中からにじみ出るなにかを、感じられる大人でありたい。

そう悟ったときには、身近に子どもがいない・・・・・(汗
いえ、それは余談・・・ヾ(;´Д`A

また、暑さは戻るようですね。
涼風の後の暑さは、さらに身に堪えます。
どうかご自愛くださいますよう。。

くまたろう様
ああ、感度良好の信州のアンテナいいなぁ。m(_ _)mうれしいです。
勇気と覚悟をもってブログを書くので、汲んでいただけたコメントをいただくとありがたい思いになります。なかなか深いテーマでしたから、経験者のお言葉が胸に沁みました。
真実は本人にしかわからないし、おっしゃる通り本人にさえあいまいだったりしますが、本当はどうしたいのかを症状から察することをしていきたいと思っています。幸いにも私にはどんどん新しい子が生まれますのでね。
そちらのブログにコメしようと思っていたら 先にいただきました。
ちなみに コメ内容は「私も おんなじ」です。風にまかせましょう。

こちらは台風のような雨でした。
山陰もまだ暑そうですね。
高校野球は本日沖縄も鳥取も勝利して まずは一勝。めでたいです。[
本質のところを躾けられていない子どもが、トトロ先生から叱られて右往左往したのですね。命にかかわる危険は 器具がどうこうより そうやって危ないことを厳しく躾けるのが先決です。親はお礼をすべきことでしょう。しかし、チヤホヤせずに躾けられたり、芯から褒めてもらったり。愛されている子ども達ですね。
トトロのアトリエに留学したかったです。
その子のこれからも報告して下さい。
お身体 大切に。

沖縄のトトロファンさま
雨の被害は大丈夫でしたか?
オリンピックやら高校野球やら、応援三昧の毎日ですね。
元気の出るコメントありがとうございます。
叱った後はとても後味がわるくて、得も言われぬほどテンションが下がっちゃいます。本当の親ごさんも大変だろうなと思います。

でも、本日あの子のおばあちゃんから「これからも行くって言いますのでよろしくお願いします。」との伝達が入りました。ホッとしました。
とりあず ご報告でした。今後をお楽しみに・・。(;-ω-)ノ

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: もの思う立秋:

« 小さな大事件 | トップページ | 盆のあとさき »