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2012年7月 3日 (火)

おめでとう

先日、何をさておき出向いたところは、鳥取市卯垣(ぼうがき)というところにあるカフェ「クロワッサン」。
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以前アトリエで絵を描いていた「石本千歳さん」の初個展の案内状が全て手書きで届いたのだ。
彼女は脳梗塞の後遺症で身体の右側が動かない。会話もなかなか通じない。しかし、障害者用の車を運転し、雨の日も雪の日もアトリエに通って来てくれていた。40代の働き盛りに発病して現在の千歳さんに変身した。変身前は塾の先生だった。私の個展に毎年来て下さって足をひきずって絵を見ておられるに姿に私はいつも声をかけた。
「私の杖お貸ししましょうか?」そしていつも二人で笑った。
かねてから書道をされていた彼女は利き手が不自由になり、ものすごく練習をして左手の書と絵を生み出した。それはとても味のあるアートだった。私は「いつか個展ができます。」と言い続けていた。通い続けるのが少し困難になりアトリエを卒業されてからも描き続けて、そして今回、個展の夢が叶って案内状をいただいたわけだった。

彼女が生きることに前向きなのは不自由になる前からだし、なかなか不便な日常の中でも出来ること、したいことに向かい続けたから、さらにいい絵になっていた。片方だけ使える足が梅雨の気候で痛み、シップの包帯が個展の苦闘を物語っていた。
「個展は自分の全てをみてもらうんだから、凜としてなきゃだめよ。」私の経験からいろいろな覚悟を伝えていたのを彼女は笑顔で実行していた。かわいそうと思ってもらっちゃあ見に来てくれる人に失礼なのだ。この素晴らしい作品の作者が、偶然ちょっと半身が動かせなかっただけのこと。人は完璧なはずがない。弱いところも悪いところも丸ごと含めてその人なのだから、卑下も自慢も必要はなく、ただ何かを見ていただこうと思ったら気持ち良く見ていただく為に心を尽くさなければいけない。

絵を描いたり音楽をしたりする人は山ほどいらっしゃる中で、個展やコンサートに来ていただこうと思ったら自分の力を出し切ってお迎えする努力が出来なくちゃいけない。私はそう思う。

「アートスペースからふる」の妹尾先生に、新聞の記事に出ていた千歳さんの初個展のことを説明して連れて行ってもらった。あらかじめ時間を知らせて千歳さんと会った。彼女は本当にきれいだった。作品は心に届いた。おめでとう、と心から思った。いのちは使い切るものだと思った。
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帰りがけにもう一度「市展」に行ってまたいろいろな知り合いと出合い、他の作家の個展にも顔を出してアートな日が暮れた。

 

梅雨の間を縫うように動き回れば、みんながちょっと疲れながら、それでもがんばって生きていらっしゃる姿に会える。アトリエに戻るとちびっ子アーチストたちの短冊がみんなの願いの重さで揺れていた。
私は千歳さんからいただいたハガキをアトリエのたなばた飾りに仲間入りさせた。

今度の土曜日には男の子が本物の笹を持って来るはずだ。真剣に書いた子ども達の願い事を読むのはとてもたのしい。

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願えば叶うんだよ・・・きっと。

本気で願えばね。
 

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コメント

個展は、いつまでですか?
何が何でも、見に行きたい。

aKoseさま
残念ながら 6月30日に終了しました。すばらしかったです。
初回でしたので体調を考えて 短い期間でしたが、一度では終わらないことを約束しましたので 次のときをお楽しみに。是非ご案内しますから。 
ありがとうございます。千歳さんに伝えます。(ノ_-。)

わたしは新聞の記事が出た日に行ってきました。
かおるせんせいの生徒さんだったとは、知らなくて、どこにも書いてなかったから。でもあたたかくて信念のある作品でした。ご本人はいらっしゃらなくて残念でした。またの作品展を楽しみにしています。

すずらん様
ありがとうございました。
記事の出た日には本人の足が痛んでしまい、お店に行くことができなかったようです。どこで習っていたかなどは別に大した問題じゃなくて、本人が何を吸収してじぶんのものにしたか が 今に繋がると思います。
でも 誇るべき生徒に恵まれていて感謝です。千歳さんに伝えます。

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