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2012年4月18日 (水)

里山のタイムマシン

15日の日曜日は午後から晴れた

 

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早朝から地区の川掃除でストレッチ済みのボスを強引に誘って、タイムマシンに乗った。

行き先は20年前の鳥取県八頭郡佐治村という日本有数の紙すきの里。鳥取市街地から車で50分くらいだ。今は鳥取市に吸収合併され鳥取市佐治町。

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和紙(わし)、梨(なし)、星(ほし)、石(いし)、昔話(はなし)の「五(ご)しの里」としてがんばっておられたスローライフの里山。
いわゆる地域おこしが盛んだった約20年前に、絵手紙の会の発足をはじめ、国民文化祭の和紙部門に展示する為の手作り地図やら映像から音楽づくりまで、何から何までうちの会社「ドリームプロジェクト」に任せていただいたことがあった。

企画会社といっても企画から制作、展示の殆どを社内で創って、現地の方々とも深い交流をしつつそこに合ったイメージを練り上げていくという、いわば文化の地産地消という理想的な関係だった。
『親切、格安、ドリームプロジェクト』。このことばは 私達の売り込みコピーではなくて、ある企画会議のときに渡された用紙にメモのように書かれていて、他の大手企画会社のところにはバッテンがついていた。「これ、ないしょのメモではありませんか?」と笑いをこらえて聞いてみると、慌てるふうもなく、「あぁ・・」と微笑まれた。

あれがハッピージョークだったとしたらすごい。格安だけで頼まれたのじゃないとわかって、当時会社を立ち上げたばかりの私達はうれしかった。今でもその姿勢は崩していないつもりだ。鳥取市と合併後は、佐治だけじゃなくどこの郡部からも仕事は来なくなった。市が大手に発注するからだ。ないものを工夫して創り上げる独特の文化エネルギーがあったのに。

市町村や学校の統合は決して良いことだけじゃなく、むしろ何かが断ち切られてしまいそうで私は嫌だった。事務的な便宜や予算の問題だけを中心に考えてしまうと、大事なふるさとへの思いが消しゴムで薄い色にされてしまう気がするのだ。津波で消失しても魂のふるさとに人々が帰りたい理由は、そこの場所に自分の根っこが宿っているからだろう。

 

 

というわけで、私達はその日、佐治の紙すき体験も出来て和紙のあれこれの展示ショップや、山菜料理の絶品食堂もある、その名も「かみんぐさじ」を訪ねた。

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あのとき手がけた全国地図の展示や、杉の一枚皿に佐治谷の桜と森を描かせていただいた大皿作品は、20年の時を超えて玄関ホールになじんでいた。
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思わず絵の中の子ども達に、「来たよ。元気だった?」と触ってなでまわした。何もかもあの時のままだ。

親切にして下さった方々は、もうどなたもいらっしゃらないのかと思ったら、ショップから懐かしい声がした。
当時、ここであらゆる事の中心になり、美声で佐治谷昔話の語り手も継承されておられた岡村さんが変わらぬ笑顔で迎えて下さった。

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ほっこりとタイムスリップして、さらに山の上の方にあるアトリエ生徒の住んでいる集落を探した。あちこちから来てくれる生徒達の中には一時間以上もかけて通ってきている子もいる。
その兄妹の家は、スリリングな細い坂道を上がった集落にあるお寺だ。「熊が出ました」の立て札や「落石注意」を横目に探してたどりつくと、軒下には融けない雪が残っていた。昔、ここの村で絵本の読み聞かせや絵手紙の会をしたときは生まれてもいなかった生徒達だ。家庭訪問はこっそり行って会わずに帰るのが私流だが、お寺なのでちょっとおじゃまして生徒の二人と遊んだ。

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こんなに遠くからいつもアトリエにきてくれることに感動しつつ、まだつぼみの佐治の桜に別れを告げた。


あちこちに知り合いがいてくれることの豊かなありがたさ。描き残した絵が残っていることのありがたさ。有り難いと元気が出る。

たまにはタイムマシンに乗って少しだけ初心に返ろう。佐治の谷は何も変わらず綺麗な春を待っていた。

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コメント

京都の者です。実はむかし、佐治で行われた「全国文房四方展」の紙すき体験と、たなかかおる先生のご指導による絵手紙のひとときを体験しました。山菜料理とイワナの豪華な昼食つきで、何十人もの その日限りの生徒にひとりずつていねいに 鳥取の魅力も解説されながらご指導くださいました。二日間全国の生徒をバスで送迎されての大人気のコーナーで、かおる先生の笑顔あふれるご指導にひきこまれて、絵が描けました。ブログのファンの娘に教えられ、拝見。涙ぐみました。あの楽しさをアトリエの生徒さん達に渡しつづけておいでなのですね。あのとき同行した小学生の娘は今は美術教師です。かおる先生の優しいご指導を見習いたいと申しておりました。お元気でいつまでもご活躍ください。

かおるさんの絵はどこで買うことができますか?

ブログのコメント欄での質問ですみません。

京のうば桜 さま
本当に タイムマシンのようです。あの時の親子連れの楽しそうな京都弁をおぼえております。お嬢さんは 大根やスズメやシクラメンを和紙に描いておられましたね。20年前に小学生だった方が もう美術の先生なんてうれしいことです。絵に限らず 生きていることは楽しいことです。
苦しみや別れも乗り越えて タイムマシンのように昨日と明日にはさまれて なるべく生きてみたいと思います。どうか お元気でいらしてください。コメントありがとうございました。お嬢様によろしく。

asaさま
ありがとうございます。
個展会場でお求めいただけます。一月に県文で大きな個展がありました。
オリジナル作品ご注文の際は 3週間ほど制作期間をいただきます。
とりあえず 多少アトリエにも在庫がありますので ご連絡下さい。
ブログ左上の ドリームプロジェクトをひらいていただき 業務案内のコーナーで 電話 ファックス をご確認下さい。
今年の個展は 10月に米子でちいさな作品の展示販売予定です。
ご予算とご希望に応じて 承ります。絵はがきはアトリエにあります。
ご質問 コメント欄でも大丈夫ですよ。感謝です。

「おれたちのことは、おれたちに決めさせてくれよ。」
まったく、その通りです。すんでいる人が、自分たちのことだと思って参加しなければ、どんなイベントを誘致したって、本当の意味で盛り上がらないし、なにも残らないと思うのです。
住んでいる人の意思を無視したお上からの命令には、ほんとうんざりです。中央で決めた法律で、住みよい地域や住人のやる気がそがれている事例があちこちに見られます。
本当におもしろいものは、予算を決めて役所からもたらされるものではなくて、どこからか自然発生的に生まれてくるもの。そういう芽を見つけて、そっと水をやったりするような、気のきいたお上であってほしいですね。

先生(^^)お久しぶりです。
佐治の事を書いていただいて、
とても嬉しいやら懐かしいやらホワンとした気持ちになりました。
昨年かみんぐ佐治の隣にかみんぐ百彩という施設もできました
驚かれたのではないかと思います。
その建物に絵と文字がかいてあったと思うのですが、
実は佐治の方々と協力して描かせていただいたきました◎
自分の両親くらいの年代の方と一緒にペンキ塗りや看板を創るのは、
最初は不安でしたが、完成して時にはすごく充実感がありました。

生徒さんとの写真が、絵の中のワンシーンのようでとってもステキです!!
こんどいらした際には、ぜひ我が家にも遊びに来て下さいね。
さらに山奥ですが…

アヤドンさま
本当ですよね。当時 佐治や気高に呼んでもらって住人の方々と共に情熱大陸を繰り広げたとき、とても楽しく達成感があったものです。子ども達からお年寄りまで ふるさとを身にまとい誇らしげでした。残してきた絵や音楽は作者不明のまま愛されているらしいです。格安と思ったら大まちがい、みんなが記憶してくださっているという豪華な報酬をいただいていました。文化は土地から湧き起こる泉のようなもの。上からは何もできないはずですよね。おかしいと思ったらみんなが声を出しましょう。

TANICHO さま
お元気にご活躍のこと ブログで拝見しています。
都会の風に負けないで、プロのイラストレーターの世界はまだまだ広がると思います。とてもステキな絵だから。
かみんぐ百彩も入ってみました。かわいい看板に誘われて・・。
賀露のわったい菜という店にも 谷上農園のジャムがありましたよ。

佐治の豊かな自然の心を京都でみなさんに分けてあげてください。
「むかし 教えた生徒がプロになったんだよ。」と子ども達に話しています。佐治谷ばなしのようです。カラダに気をつけてね。

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