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2012年4月 2日 (月)

先輩の帽子

コウキ君はどんな時でも帽子をかぶっていた。絵をかくときも、おやつタイムも、春夏秋冬いろんな種類の帽子をかぶってアトリエ通いも5年になって、この間中学に行くのを区切りにアトリエを巣立った。

一度だけ「中では帽子をとりなさい。」と言いかけたが「帽子も併せて一人前なのが分かったけど、お風呂に入るときは帽子を取るのよ。」と言うと、実にうれしそうだった。
「学校でもかぶってんの?」と聞くと、「学校では周りと合わせてるよ。」とのこと。帽子と同じように彼には自分だけのこだわりがあり、必ず絵本を一冊読んでから絵を描き始める。

「タンタンの冒険」が好きなので、ネットで購入してシリーズを増やしておくと、本棚にそれを発見して、「買った?」と見上げるので、「気がついた?」と笑うと、にっこりして全部抱えて絵を描かずに読みふけっていた。

何かが取れたように、それからはちゃんと絵を描き、高学年になるとアトリエの後輩たちにちゃんと気を配る男の子になった。帽子とタンタンでゆったりと落ち着くアトリエは彼にとってパラダイスだったが、ついに先日別れの日が来たというわけだ。

1204021

 

 
その日、後輩のK君は新しい野球帽をかぶってアトリエに来ていた。おやつの時以外は「そうそう・・・。」というふうにそれをかぶり、いつものように絵を描く姿に私はつい聞いてしまった。
「コウキ君の後をひきうけようとしてる?」。K君は「ち、ちがうよ。たまたまだよ。」と慌てている。悪いことを聞いちゃったな、と思ったけれど、「さあ、四月から残ったメンバーで大丈夫かな?」と話をたたみこむと、低学年のK君が胸をはり、「せんせい、まかせてよ。ボクがぼうしをかぶるから。」と買ったばかりのような自分の帽子を被ってみせた(やっぱり)。

 

中学生になる六年生がクラスを土曜に代わったり、こうして辞めていったりするときにいつも見られる光景に胸がくすぐったくなり、涙目になる私。子ども達は先輩を見て(かっこいい!)と思っているらしく、絵まで似てくるときがある。

今日も、中学に上がるココロちゃんが、「やっぱりここのクラスで続けてみます。」と言いに来た。みんなに告げると「やったー!!!」と喜ぶ子ども達。それを見て、ココロちゃんが一番うれしそうだった。

「後輩たちにこんなに慕われる先輩になるのよ。」と言って拍手と乾杯をした。別れのときに惜しまれる人物になれれば100点。アトリエの子ども達が毎回見せてくれる見事な春の廻り舞台だ。

 

先日、障害のある子ども達だけにマンツーマンで絵を教えているアートスペースカラフルの妹尾先生と一緒に、島根県立美術館に出かけて「花森安治展」を観て来た。あんまり素晴らしかったので、今度の日曜は3年ぶりのアトリエ修学旅行を決行する。中・高校生と大学生と浪人生で旅に出ることにした。みんな後輩に慕われていたステキな子ども達だ。
「連れて行く」ふりをして「連れて行ってもらう」私のいつもの幸せなたくらみ。
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桜もぼちぼちふくらみ始めた。花森安治展は9日まで。

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コメント

コウキ君卒業ですか。何度か会ったことがあるので正直さびしいです。でも、しっかり下の子が意志(?)を引き継いでいるのがいいですね。皆それぞれ別れや新たな一歩を踏みしめる季節だけれど、何か大切なものや思い出があれば、それが前に進む支えになるんだなあと思いました。ボクも山梨で学生生活頑張ります!

十十六衛門さま
遠く山梨からアトリエの大先輩コメント ありがたく感激です。(ノ_-。)
コウキ君は あなた達を見ていて 高校生になったら夜のクラスに帰ってくると言っております。先輩たちの生き方を 後輩たちはしっかり見ているようですよ。風の強い日でしたね。もう全国全部の天気図を見て、みんなの無事だけを祈っているトトロです。元気で自分を磨いて下さい。またいつでも帰って来てね。(◎´∀`)ノ

強風が がれきの山を吹き飛ばそうとしていましたね。
アトリエの修学旅行、たのしいでしょうね。深くて。
ブログもコメントもいつも素晴らしい。彼は帽子をかぶって本を読んだこと絶対に忘れないでしょう。自由という空間を与えてもらっていたことに気づいたとき、さらなる有り難さに打ちのめされつつアトリエ時間のことを人生のしおりにしていくのかな。いいお話です。

かおる先生からふるは平仮名です(>_<)

花森安治展は本当に良かったですね
皆さんが絶対楽しめると思います(^_^)v
素敵な思い出が出来ますね

では気をつけて行ってらっしゃいませ

宇宙の旅人さま
本当に がれきの山が吹き飛んでしまえばいいのに、と思います。
自由であることは 自分の力で規制する心も含まれるので、とても成長して行く子ども達です。幸せの連鎖で 音楽のように気持ちのいいひとときになったらいいな・・・と思いつつアトリエをやっています。いつも宇宙からありがとうございます。m(_ _)m

からふる様
(。>0<。)あーーーーーっ そうでした。ひらがなの「アートスペースからふる」でした。失礼しました。
あれから 腰大丈夫でしたか? 私 ちょっとの間ギックリでした。夜のタクシーが原因かと(;д;)。治ったので また行って来ます。

また どっか行きましょう。なんか 楽でした。感謝です!!!!

子育てで「待つ」ってほんとに大事ですよね。コウキくんの話を読んで、あらためて感じました。今は子どもが少ないので、子どもがゆっくり段階をふむのを待ち切れず、右往左往してしまいがちなのですが、アトリエの子どもたちの成長を見ていると、「どの子もいつか必ずすてきな花を咲かせる」って思えるから嬉しいです。

それにしても、このブログ、コメントも読みごたえありますね。

アヤドン様
そうなんです。コメントだけで一つの作品になりそうです。
アヤドンを筆頭に、皆さんステキです。おかげさまでブログのパワーが枯れません。どなたか存じ上げない方のコメントも増えて ワクワクします。 「ヽ(´▽`)/みなさ ~~~~ん いつもコメントありがとうございま~~~~す!!!! どんどん くださいね。」

ここをお借りして お礼しちゃった・・・。子ども達にも見せています。
おめでとうだらけの 四月です。(*゚▽゚)ノ

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