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2011年11月23日 (水)

平和を耕す少年

 5年生の耕平くんは月曜クラスの日、一番乗りで走って来た。日暮れ時の5時からクラスは部活やら宿題やらを片付けてから少しだけ遅くなってしまうことも多いけど、初めての一番乗りで息をきらしてアトリエに入って来た彼の顔は生きていた。

やがてあちこちの小学校からも女の子たちが到着して、新入りのS君も5時きっかりにやって来た。ドライブスルーで、車のお母さん達はいさぎよく手を振って帰って行く
新入りS君一年生、アトリエ3回目。やや障害を持ち、耕平くんの小学校の中の支援学級で学ぶ。
「学校で会ったから、よっ、と手を振ったで。」
アトリエの時に「おにいちゃん」と呼ばれた耕平くんはS君のめんどうをみる決意をしているらしかった。
見ていると他の4人の女の子たちもさりげなく世話をやき、なかなか文字の読めない彼に小さく教えたりしている。
「みんなのつくっている楽しい空気を壊すようでしたら申しワケありませんがご遠慮ください。」と言ったのは私だ。

S君に絵を習わせたいとお母さんが連れて来られた時に。みんなにも相談した。そんなことはアトリエでは時々あった。
いつも「大丈夫だよ。」と言うのはこども達のほうだった。神経質になっている私に学校で体験しているいろいろなことを話して、
「アトリエまで来たんだから、大丈夫だよ。」と笑うこども達。
一番助けられているのは私自身なのだ。アトリエを運営しているのは子ども達の育ちゆく心だ。

思えばずっとそうだった。15年もひとりでやれた筈がない。

ふと見ればみんなで静かに描いている。
時々大きな声で楽しそうに騒いでしまうS君に私は言った。
「自分だけが楽しくて大声を出すのはやかましいんだよ。みんなで一緒に楽しいのはやかましくないの。おんなじ声でも不思議でしょ?」
S君はわかったのかわからないのか「はい。」と言って少し静かになった。

それから絵本を読み聞かせしていたとき全員で笑ったら「これはうるさくないだろ?」と耕平くんが諭してくれていた。

その日アクリル絵の具の作品をはじめて完成させた耕平くんを祝ってクラス写真を撮った。「油絵チャレンジ記念の日」と「S君担当ありがとう記念の日」ということにした。

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私と同じく女の子達もみんな耕平くんを男らしいと思ったのだった。S君はいい顔をしていた。
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絵にサインを入れながら「先生、僕の名前の意味ってなぁ、平和をたがやす、っていうことだでぇ。」と言う耕平くん。
「人って名前の通りなんだね。」と私。

みんながチラリと自分のサインを見なおしていた。

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コメント

本当に、すてきなアトリエだなあ~と思って毎回読ませていただいてます。

で、みんな、いつも絵を描いたあとにサインを入れてますよね?
そこで、ピーター・レイノルズの絵本「てん」を思い出すんです。

一人ひとりを認める「サイン」
それぞれに、思いをこめられた大切な名前。大切な一枚・・・・ですね。^^

くまたろう様
「てん」の ワシテ みたいに、自分がしてもらったことや ほめられたセリフを 後輩に告げている場面を見ると、心の中で(やった*+*+*+)と
思います。「てん」を読み聞かせすると 必ずだれかが「アトリエみたいだね。」といいます 。あの本に出会ったとき、あまりの一致に驚き、このままでいいんだ と 安心しました。そろそろ子ども達の絵を額縁に入れる準備です。「サインしてくれる?」と言える瞬間が楽しいですよ。

今日 みぞれが降りました。くまたろうさんも お元気で。(*゚▽゚)ノ

いつも 子ども達の写真の表情が満足そうで素晴らしいことです。
ゆったりとわざとらしくない 自然な微笑みは なかなか見なくなりました。子ども達との会話も自然で ていねいで おもしろい かおる先生は少し 宇宙人でいらっしゃいますね。

宇宙の旅人さま
(・_・)エッ....? わかりますか?
実は・・・・・たぶん・・・・・きっと 宇宙人らしいのです。
と、いろんな方から言われたりもしています。
でも 地球人だって 宇宙の人にはちがいなく、大きな大きな宇宙の中の小さな小さな「ひと」という生物なのですよね。なかよく生きて行きましょう。みんな弱いから。また 通信して下さいね。ピーピーピー
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

ほんとうに、子どもたちにはいつだってやられちゃいますね。
いろんな人がいて当たり前なんだけど、画一的な対応をするほうが楽だから、理由をつけて別の場所を用意してしまう。そんなことがいっぱいあるんだけど、子どもは「なんで、いっしょじゃいけないの?」って聞いてくれることがあって、恐れ入りましたという感じです。
でも、いろんな人のなかで成長することで、生きる力がつくと思うんですよね。器の大きな人になれると思うんですよね。

アヤドンさま
なにかしらの役目を持って みんなが生まれてきたとしか思えません。
エネルギーの弱い時に 見渡す範囲が狭くなってしまいがちなので、こっそりと子ども達の新鮮なエネルギーをいただきながら やっていくつもりです。 子ども達の健康的な自然体の考えの方が絶対に正解だと思います。自分の器を使い込んで いい味のトトロになりたいものです。
恐れ入る毎日を いっしょうけんめい生きています。
ほんとだよ。Σ(;・∀・)  寒くなってきたので 気をつけて下さいね。

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