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2011年6月15日 (水)

海の男

 R太君は海辺の町から来ている小学3年生。いつも船の絵を楽しげに描き、誰も知らない船の種類も知っている。

 ある日事件は起きた。オヤツの時間、いつも大声で騒ぐはずの彼が黙っているので、ちと怪しい気配。先の折れたガラスペンを握り、きまりの悪そうな顔でモジモジしている。

「なんて言うの?」と恐い顔をしてみせると、蚊のなくような声で「ごめんなさい…。

ガラスペンは私がたまにペン画を描く時の大切な道具。

 
 オヤツ休憩の時に一瞬アトリエを暗くしてローソクをともし、また明るくしてから息で吹き消す小さなレセプションは、気持ちの転換に素敵な効果をもたらすから毎回やる。
 彼はローソクの蝋(ろう)を砕こうとして、近くにあるガラスペンで突き刺したら蝋が硬くなっていてペン先がポッキリ折れたらしい。

「一番は、人の物を黙って使ったこと。そして、その時間に関係のない行動をしたこと。さらに、すぐあやまらないで、見つかってからあやまったこと。」

周りのみんなはシーンと聞いている。
お母さんに自分で言うことを約束して、かおる先生はR太を信じるから…と、その日は収めた。

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 かくて時は過ぎ、また彼の教室の日がやってくる前の日のこと、私はお母さんに電話をした。

「何か聞いていらっしゃいますか?」
「いいえ・・・・、でもちょっと様子が変なんです。『あした、アトリエの日だでなー?』と、何度も念を押すんです。」
私はお母さんに全てを伝え、
「二週間苦しかったと思います。上手に聞き出して楽にしてあげて下さい。」とお願いした。

 3人姉弟の真ん中、内弁慶で気が弱く、慣れると大きな声でおしゃべりなR太君のことをお母さんは少し悩んでいる様子。
大丈夫、様子のおかしい日々というだけで100点合格だ。おとなだったら、「もう行かない。」と逃げてしまうだろう。

 翌日、教室のみんなにお母さんとのやりとりを伝えていると、晴れ晴れした顔でR太君がやって来た。ちょっとだけ海の男になったような笑顔が可愛いかった。

中学生が私に言った。「先生、よかったな~。」

 

彼が来てから一年になる。ただいま全員で人間修行中!

 
1106151
(事件のあった日のR太君の絵)
 

1106152
(気持ちが晴れ晴れした日のR太君の絵)

 

※このお話は、R太君の保護者様の了解の上、掲載しています。

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コメント

「事件のあった日のR太君の絵」が、とても好きです。
とってもいい絵だと思います。

aKoseさま
ありがとうございます。私も好きです。感動してしまいました。
ちなみに 船の名前は「平成丸」ですって。

同じ気持ちで嬉しいです。
出来れば実物が見たいです。
可能でしょうか。

aKoseさま
わかりました。R太君の許可をもらってから 持って行きましょう。
お楽しみに。

絵はうそをつけないですね。
人間らしくっていいな〜。

そして、勉強になります。

米子のトトロさま
ほんとに・・・。苦悩の時も、安堵のときも、いい絵が生まれますが どちらかといえば 人は苦しみを知ってから より穏やかなものが創れるような気がします。
子ども達の叫びから ごまかしのない 本当のことを教えてもらう毎日です。(*v.v)。...。oо○**○оo。...。oо○**○оo。...。oо○**○оo。
コメントありがとうございました。

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